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タイトル ライブラリアン・ラプソディ

45 今日はラッキーデー?

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

 羊に猿にインディアン、金星人で山脈で七赤金星、そして白雪姫、これぜ~んぶ私のこと。星占いに動物占い、五星三心、六星占術に天星術、九星気学と王妃占い、これは様々な占いから切り取った「私」である。
 「フロンティア精神をもったヒーローで、ピュアで天真爛漫。知能が高くかつ協調性もコミュ力も高いので友達を作るのが上手。好奇心旺盛でどんなことでも楽しめるけど、飽きっぽいのがたまに瑕。上品さと気品を持っていて礼儀正しく、ただキッチリしているようで楽観的なので、時間にルーズだったり忘れっぽかったりと超マイペース。でもね邪悪な心は持ってませんよ。テキパキしていて面倒見がいいけど、たまにお節介がすぎちゃうの。そうそう、超現実主義でありながら、妄想癖だってありますわ」、バランスいいよね!(のか?)と、これらが私の特性⁉ というわけ。わぁ~お、どれも私? ちょっと気持ちが追い付いていきませんが、色々な人生を生きているみたいで面白くない?

 ある日の運勢。「余計なひと言が出やすい日。また些細なことで周囲の信頼を失ってしまうかも」、合点承知! 言葉には十分気をつけよう。「新しいお店を見つけたり、安いスーパーを発見したりとうれしい出来事も。いつもとは違った風景や景色があなたを活性化」。素敵! ちょっとお出かけしてみようかな。「気持ちが伝わりやすい日。あなたの気遣いや思いやりが光ります」なるほど、でも失言は禁物だったよね?

 雑誌『ダ・ヴィンチ』掲載の「メグさんの読書占い」は、月に一度の私の密かな楽しみ。星座占いと共に「読書キーワード」が書かれている。2024年2月号を見ると、牡羊座の読書キーワードは「表紙に著者の顔写真が載ったエッセイに注目」だって。表紙に著者の顔写真って、芸能人のエッセイかな? としばし考える。『向田邦子の青春』があった! 妹の向田和子さんが書いた写真とエッセイで構成される1冊。市民図書館の予約ボタンをポチっとして、あとは休日のお楽しみ。美食家でお料理上手だった向田邦子さんだから、イチゴ大福と読書、相性がいいはず! と週末の予定は決定である。あれっ、著者の写真じゃないけどいいのかな?

 それから、ファッション誌『FIGARO』掲載の石井ゆかりさんの星占いは、やさしい語りと抽象的な表現が魅力で同僚の間でも大人気である。彼女の『3年星占い』シリーズは、職場のベストセラーコーナーに12星座が並んでいる。
 地方紙『河北新報』掲載のタロットカード占い師緇井鶏子(しいけいこ)さんの誕生月占いは中毒性あり! 20文字で表現されるその日の占いは、時にトリッキーでファンキー。「道端で動物とにらみ合い力を奪われてしまう」だったり、「敵の力が一気に弱まっていく。横取りできる」であったり、「ん?」と思うような異世界へと誘ってくれる。

 女性×占いはいつの世も定番の組合せ。江戸時代後期に刊行された女性教養書である『女教大全姫文庫』には、「弘法大師四目録の占(うらなひ)」が載っている。これは古代中国から伝わる易
によってあらゆる現象を八種の形で表した八卦を使った占いで、「待人」「呪詛」「病気」「失物」などをみるもの。弘法大師の口伝ということになっているらしい。年齢、生年月日と時間を合計して、これを八払いした余りの数字で易の掛けを出して、それぞれの問占ごとに掛の意味をみる。まるで現在のおみくじみたい。
 また、これも女性の教養書である『女今川教訓状』(江戸時代後期刊)には「夢うらない」が載っていたし、明和六年(1769)刊『女用知恵鏡寶織』の「女一代八卦」には、生まれ年や月による占いが記載されており、例えば「たつのとし生まれは北浄国の王子也。ほくとの星より金五貫匁うけゑて此世にむまるゝなり。」といった具合である。女性誌×占いというアイディアは、この時すでに始まっていたのだ。おみくじだって占いの一つ、時代を問わず占いは私たちの生活と密接にかかわってきたのである。


参考資料:
『江戸の女性:躾・結婚・食事・占い』陶智子著 新典社、1998

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