皆様こんにちは。いよいよ今年もあとちょっと。年々時間の過ぎるのが早くなっているような・・・。街はクリスマスモード、あちらこちらのイルミネーションが美しく輝いています。
さて、前回ご報告したウォーキング、なんとまだ頑張って続いております!(ここ拍手いただくところです(笑))ナイトウォーキングはとても暗く、いくら私でもちょっと怖いので、日中のうちに歩くようにしています。エレベーターやエスカレーターをやめて、階段で上る、など、ちょっとしたことで、ノルマを達成しています。
ようやく涼しくなってきたころ、絵本作家さんの訃報が相次いで飛び込んできました。
中川李枝子さんは、『ぐりとぐら』(※1)のシリーズをはじめ、多くの絵本、幼年童話を世に送り出した方です。ちょうど昨年の12月、第9回の連載でも取り上げた『ぐりとぐらのおきゃくさま』(※2)は、クリスマスにぴったりの絵本です。
なかでも大好きなのが『ぐりとぐら』です。出版年から考えると、私も子どものころに出会っていてもおかしくないのですが、初めての出会いは図書館員になってからでした。
2匹の野ねずみ、「ぐり」と「ぐら」が、歌を歌いながら、栗ひろいをしています。そこで見つけたのは、なんとも大きな「たまご」。さあ、お料理好きのぐりとぐらはこのたまごで、カステラをつくることにします。
人気の絵本である理由は、すぐにわかりました。かわいいキャラクターと楽しい言葉、そして何よりおいしそうなカステラが印象付けられ、忘れられない絵本になるのだと実感したのです。
わかりやすく、はっきりとした言葉でつづられる世界は、とてもシンプルです。2匹の関係性や、落ちていたのは何のたまごなのか、など、つっこみはじめたら気になるところもありますが、そういう部分はそぎ落とされています。保育園で働いていた中川さんは、このことについて以下のように語っています。
<「だって、あの人たちは具体的に、親切に、正確に話さないと、すぐにどこかに行ってしまうのよ。今も創作にかかるときは、子どもたちと向かい合っている気持ちで書いています。緊張するわよ。耳で聞いてイメージの浮かばない表現は許されないし、あやふやなストーリーは禁物だし。」>(引用※3)
文字が読めない子どもたちにとって、物語は耳から届けられます。その物語に真摯に向かい合う中川さんのことば選びの根幹はここにあると思いました。
絵を描いたのは中川さんの実妹の山脇百合子さん。一見シンプルに見えるのは、背景が白抜きになっているからでしょう。その背景のおかげで2匹をはじめ、登場人物たちの表情や、できあがったカステラに目が吸い寄せられるのです。そして、その描かれなかった部分は、読み手が自由に想像する余白でもあります。
絵を見る目とお話を聞く耳が育つ、というと教条的ですが、子どものまなざしを思いながら描かれたこの絵本は、今後も長く愛されていくことを確信しています。
せなけいこさんの作品を知ったのは、『いやだいやだの絵本』シリーズでした。幼いころ手にしたときは、作品が印象的で、ちょっとこわい本、と思っていました。
今回紹介するのは、『ひとつめのくに』(※4)です。
場面は珍しいものを見せる「みせものごや」からスタートします。世にも珍しいお化けがいると思って中に入ってみると、とんちや、謎かけのような、いんちきな見世物なのでした。お客が減ってしまったので、「みせものし」は、うわさをたよりに「ひとつめ」を探しに出かけます。いざ「ひとつめ」の女の子を捕まえて逃げようとしますが、仲間に取り押さえられてしまい、なんと、自分が見世物になってしまう、というお話です。
大人になってみると、この本の面白さ、といいますか、奥深さを感じることができます。今自分が置かれている場面や立場を「当たり前」「普通」だと思っていますが、視点を変えたらそうではなくなってしまう可能性が大いにあるのです。この本では「見た目」ですが、考え方や行動なども、今は個性の一つと捉えることも多くなっています。
この本は、文字はひらがなで書かれているため、低学年から手に取っていただくことが多いのですが、とんちが効いているので、オチがわかるようになってから、もう一度手に取っていただけたらなと思います。
子どもたちと向き合い、心の成長を支えてくれる作品を多く生み出してくれたお二人のご冥福をお祈りするとともに、これからも作品をより多くのお子さんたちに伝えていけるよう、頑張りたいと思っています。
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中川 李枝子 文,
大村 百合子 絵,
福音館書店,1967