皆様こんにちは。新学期、新年度、新しい環境、新しい出会い、新しいものづくしの4月。いかがお過ごしでしょうか?
子どものころは、だれと同じクラスになるのかとそわそわしながら新学期を迎えていました。消極的な性質でしたので、新しい環境になれるまでに子心の準備が必要でした。大人になると、だんだん図太くなって(笑)、新しいことにわくわく感も味わえるようになりました。成長したなぁと思います。とはいえ、人事異動などもあり、年度の切り替え&準備で毎年4月はあわあわと仕事をしております。
さて、春になると、植物が色づき、動物たちも活気づいてきます。まったくのインドア派の私ですが、この時期だけは桜を楽しんだり、野の花に目を向けたりと春を味わっています。そして、見つけるのです、小さな穴を。アリなのか、はたまた違う虫や動物のものなのか。地面の中がどうなっているのか、気になってしまいます。夏休みの宿題で、アリの巣を作るキットがほしいと思っていましたが、親に反対され、結局地面を歩いてエサを探すアリをずーっと先まで追いかけて、じっと見ているうちに大人になってしまいました。その後、本でアリの巣の断面を見た時は感無量でした。そんな、私と同じように穴が気になるあなたに、「穴」をテーマに本を選んでみました。
一冊目は、『あな』(※1)です。縦開きのこの絵本を開くと、見返し部分は白一色。さらにページを繰ると、「あな」というタイトルがどーんと迎えてくれます。
日曜日に、ひろしくんが穴を掘る話、と言ってしまえばそれまでなのですが、いろんな人が入れ代わり立ち代わり現れて、ひろしくんに語りかけます。深く掘った穴の中は、「ぼくのあな」だと思いを馳せます。
短いながらも、登場人物のらしさが表れる谷川俊太郎さんの言葉選びは、とてもテンポよく読み進めることができます。和田誠さんの描きこまない絵もその言葉のシンプルさをより際立たせてくれています。
自分とは、と見つめるのには、ちょうどいい暗さと狭さと深さなのではないでしょうか。小学生高学年にもおすすめしたい一冊です。
二冊目は『どうする どうする あなのなか』(※2)です。この本も縦開きの絵本です。3匹の野ねずみが2匹の山猫に追いかけられています。でも大変!その前方には深い穴が!あっという間に野ねずみたちも山猫たちも落っこちてしまいます。さあ、どうやって穴から出たらいいのでしょう。出る順番によって食べられてしまうかもしれない野ねずみと、なんとかして穴から出て野ねずみを食べたい山猫の知恵比べが始まります。
生き生きとした動物たちの表情はもちろん、それぞれの知恵を出し合っている姿がとても楽しい気持ちにさせてくれます。きむらゆういちさんの楽しいストーリー展開と、高畠純さんの絵がとてもマッチして、読み聞かせをされている方にもおすすめです。
三冊目は、『あなのはなし』(※3)です。最初は赤い靴下にあいた小さな穴。だれも繕ってくれなかったので、穴はどんどん大きくなって靴下を飲み込み、外の世界へと出かけていきます。ドーナツ、カエル、ツバメ、ヒツジと一緒に穴は旅を続けます。小屋で休んでいると、やってきたのは一匹のオオカミ。次々に仲間たちを飲み込んでいきます。最後に穴が飲み込まれると、オオカミのおなかに穴があき、仲間たちが飛び出てきます。
とてもわかりやすいストーリー展開で、どきどきしながらページを繰るのが楽しい絵本です。特に、この絵本に登場する穴は、本物の穴なのです。あなたのおうちにも穴のあいた靴下はありませんか??もしかすると穴が冒険に出てしまうかもしれません。
今回は三冊ご紹介しましたが、穴の本は、まだまだたくさんあるんです。ぜひ、いろんな穴を絵本で見つけてみてくださいね。
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ミラン・マラリーク 作,
間崎ルリ子 訳,
二見正直 絵・あな,
偕成社,2014