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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第62回 桜餅を頬張りながら、図書館の課題を考えた

裏山の三分咲きの桜をぼんやり眺めながら、今年の花見はどうしようなんて考えていたら、郵研社の登坂さんから「今、図書館の課題は、どんなことなのでしょうか。」とメールをいただきました。

新年度を迎え、図書館によっては来年度の予算要求の準備が始まっているかもしれません。タイムリーなことに、今年(2026年)3月、文部科学省が「図書館が拓く未来の学びと地域社会(報告書)」を発表したので、国レベルの図書館政策も大きく変わりそうです。あらためて、日本の公共図書館の課題を展望するにはいい頃合いですね。

文部科学省の報告書には、「図書館の現状・課題」として、次のような点が挙げられています。

  • 図書館の設置に地域間格差がある。(町村部が少ない)
  • 1館当たり利用者数や国民1人当たり貸出数がコロナ以前の水準に戻らない。(電子書籍サービスは増えた)
  • 専任職員数も、1館当たり資料費も減少した。(非常勤職員は増加)
  • メディア情報リテラシー向上が喫緊の課題だ。(SNSや生成AIの急激な普及を受けて)

現象としてはそのとおりだと思いますが、ここで疑問が浮かびます。仮に専任職員や資料費が増え、未設置自治体にも図書館ができ、さらに利用者数や貸出数が増えたとしても、はたしてメディア情報リテラシーの向上のような、現代社会の要請に応えるサービスの革新ができるのでしょうか。

参考として、2010年に日本の公共図書館が何を経験したか振り返ってみましょう。総務省は1千億円の「住民生活に光をそそぐ交付金」を全国の公立図書館も利用できるようにしました。その結果、公立図書館関係だけで2千件以上の利用があったのです。これはイノベーションの好機でした。私が働いていた田原市図書館では、新規事業として回想法などを取り入れた高齢者福祉施設への訪問サービス「元気はいたつ便」に交付金を充てました。ところが、この交付金を田原市と同様、新規事業に使った図書館はけっして多くはありませんでした。交付金の大部分は図書や棚の購入、施設の修繕などに使われたようです。日本の公共図書館全体を眺めたとき、みすみすサービス改革の好機を逃してしまったと分かったときには、なんとも残念な気持ちになったものです

私がみるところ、日本の公共図書館にとっての真の課題は2つあります。

第一に、その地域に住む人々にとって図書館がどんな存在でありたいのか、はっきりと打ち出すこと。自らの存在意義を、「土地の事情及び一般公衆の希望」(図書館法第3条)と図書館員自身の思いに裏打ちされた、自前の言葉で語ってほしいものです。

第二に、その存在意義を更新し続けるために、日々変化する環境から学び、試行錯誤しながら成長する「学習する組織」を実現すること。そのためには、内輪ですべてうまくやろうなんて考えは捨てて、外部に対してオープンで、実験や失敗を楽しみつつ学ぶ「冒険遊び場」のような組織でありたいですね。

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

桜の花は美しいけれど、それだけではありません。草木染の染料や和歌が生まれるまでには、多くの先人の試行錯誤があったはずです。私は桜餅をつくった人に心から感謝しています。みなさんは、図書館という木から、何を創り出したいですか?文部科学省の報告書は「地域ニーズ把握のための利用者・非利用者との対話」を勧めていますが、まずは図書館員同士の対話を、ぜひ、お試しあれ!以前の当欄で紹介した、アクティブ・ブック・ダイアローグという読書会の方法で文部科学省の報告書を読むのもおすすめですよ。

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