back number

タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第44回 館長さんの悩み相談室

 毎年、9月になると文部科学省主催の新任館長向け研修が開催されます。この数年、私も「チームマネジメント」というテーマで、1コマを担当しています。終了後に受講された方からテキストで匿名の質問をいただき、私もテキストで回答をするのが常です。今年のやりとりから、本コラムの読者に興味を持っていただけそうなものをアレンジしてご紹介します。

(質問)
 部下の雇用形態や勤務時間がまちまちだったり、働き方改革で残業が難しくなったりする中で、時間外の会議もできず、講師がおっしゃるような「ビジョンや経営情報の共有」が難しいです。何か助言をいただければありがたいです。

(回答)
 ご質問ありがとうございます。多くの館長さんが同じような悩みを持っておられると思います。

 だいじなことを話し合うためには、その時間を捻出する必要がありますね。それが難しいとすれば、2つの方法が考えられます。

 1つ目は、今の仕事にかける時間を短くして、時間の余裕を生み出すこと。まずは、どんな仕事にどのくらいの時間をかけているか洗い出し、全体像を把握します。そのうえで、効率化の工夫をしたり、優先度の低い仕事を削ったりするのです。

 2つ目は、職場内での対話や情報共有に、対面の話し合い以外の方法も駆使すること。ノートや手紙のようなアナログなツールから、無料に近いコストで使えるデジタル・ツールまで、いろんな手段がありますよ。

 どちらの方法を取るにせよ、忘れてはならないことがあります。それは、「ビジョンや経営情報の共有」を最優先にすること。そして、何が起こっても、誰に何を言われても、最優先を貫くことです。そうすれば、周囲も館長さんの本気度を感じ、真似をする人もでてくるはず。習慣として職場全体に定着すればしめたものです。

 私が現役の館長だったとき、情報共有のためのデジタル・ツールが既に導入されていましたが、あまり利用されていませんでした。このツールが定着すれば情報共有が大きく進むのは間違いないのに…。

 そこで、スタッフから口頭で報告や提案があったときは、よほど緊急でない限り、必ずこう言いました。「ありがとう。それは大切な情報だね。詳しくは、ぜひ情報共有ツールに書き込んでね。」

 もちろん、対面で話し合った方がよいこともあります。大勢が出席する会議の場で本音の話は難しいものですが、一対一の対話だったら立ち話でもできます。それを繰り返し積み重ねていくと、一人ひとりの悩み、願い、そして働き甲斐も見えてくるでしょう。

 どんな方法であれ、まずはやってみる。うまくいかなくても、失敗ではなく実験のデータが増えたと考え、次の手を打つ。そんなことを、倦まずたゆまず繰り返している姿を周りに見せる。それもリーダーシップのあり方です。

挿絵
※挿絵はクリックで拡大します。

 そうはいっても、館長は孤独です。一人で悩む時間が続くと、心折れるようなこともあるかもしれません。近隣自治体の館長が集まって定期的に会議を開く地域は多いと思いますが、正式の会議が終わった後で、悩みを語り合う場ができるといいですね。

 一つでも心に刺さることがあったら、ぜひお試しあれ。

Copyright (C) yukensha All Rights Reserved.

design pondt.com テンプレート