
今年(2025年)10月19日、Wellry(ウェルリー)株式会社(https://wellry.jp/ )と土岐市図書館が連携して、岐阜県土岐市「ブック&サイエンス・フェス」でユニークなサービスを行いました。Wellryのブックコーチや土岐市図書館の司書が、約20人の来談者と個別に対話をして、生成AIを使いながらそれぞれの来談者に合った本を選び、紹介したのです。Wellryでは、このサービスを対話選書と呼んでいます。私もブックコーチの一人として参加し、とても興味深い体験をすることができました。
ブックコーチによる対話選書では、AIに本選びを任せます。自分自身は来談者の話に集中して耳を傾けることで、対話がぐっと深まります。それが、選書にもよい影響を及ぼすのです。従来の司書のスキルは、選ばれた本の書誌が間違っていないか、また、どうすれば入手できるかについて調査するところに生かされますが、このサービスでは傾聴が主、調査が従といってよさそうです。これは、ブックコーチを実際に体験してみなければ分からなかったことでした。
もちろん、対話と選書の両方を一人で行うこともできますが、ブックコーチには従来の司書スキルでは軽視されてきた能力が求められます。それがコーチング・スキルです。私は、かつて産業カウンセラーの講習を受けて資格をとったことがあるのですが、今回はそれが大いに役立ちました。コーチング・スキルとカウンセリング・スキルには、傾聴する姿勢・技術をはじめとして、共通点が多いのです。
コーチング・スキルはファシリテーション・スキルと共に対話の場としての図書館づくりにも役立つものです。もちろん、対話の場づくりを目指す図書館だからといって、全員がそのスキルをプロのコーチやカウンセラーのレベルまで身につけようとしなくてもよいでしょう。まずは既にそういう能力が高い図書館員を館内で見出すと同時に、館外のすぐれた人材と連携を組み、必要なら彼らとの協働を通じて学ぶことをお勧めします。とはいえ、繰り返しますが、コーチング・スキルは、これからの図書館で大いに役立つことはもちろん、司書として以外の日常生活でも助かるのは間違いありません。日々の実践を通じてブラッシュアップできる能力でもあります。
読書相談は図書館の重要なサービスのはずですが、調査・相談を中心とするレファレンス・サービスに比べると、これまで脚光を浴びることは少なかったと思います。レファレンス・サービスの一部、あるいは児童サービスの一部として取り組まれることはあっても、大人のための読書相談について、独自の方法が確立しているとは言えないでしょう。膨大な本の知識が必要とされることが本格的な取り組みのネックだったのかもしれませんね。しかし、生成AIの登場とコーチング・スキルの活用が可能になれば、読書相談のハードルはぐっと下がりそうです。本の知識については、生成AIの力を借りることができるのですから。司書のスキルは、生成AIの選書に誤った情報が混じっていないかといったチェックの段階で活用できます。このようにして可能になる読書相談を、読書相談2.0と呼びましょう。
今、私は読書相談2.0について学ぶ場がつくれないかと妄想しています。興味がある方には、ぜひ一緒にチャレンジしていただきたいものです。図書館だけでなく、学校、職場、地域、家庭…どこでも楽しめて役に立つこと間違いなし。ぜひ、お試しあれ。
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