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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第54回 読書×AIは、最高の課題解決である

糖尿病予備軍の診断を受けてから、2年以上が経ちました。予備軍とはいえ、いつ本隊(?)に編入されるか、と惧れを抱えながら過ごすのは、気持ちの良いものではありません。筋トレ、ウォーキング、食餌制限と一通り試しても予備軍脱出ができない中「残るは走ることかな」と思い始めました。そんな矢先、科学の入門書シリーズとして定評ある講談社ブルーバックスの1冊、『ランニングする前に読む本』を読み、これはやってみる価値があるかも、と閃いたのです。それ以来、毎朝(正確には週6日ペース)30分、ジョギングをしています。おかげで今は、数値上ほぼ予備軍脱出水準に達しています。だから読書は健康増進に役立つといいたいところですが、正確にはタイトルどおり「読書×AI」に秘訣がありました。

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

診断が下ってから、医師の勧めで医院併設のジムに通い、筋トレとウォーキングを開始したのですが現実は甘くありませんでした。3か月ごとに体組成計に乗っても、数字はほとんど動かなかったのです。努力しても結果が見えない期間は、想像以上に長く感じられました。「やっぱりもう年齢的に無理なのか」と、気持ちが萎えることもありました。

形勢が変わるきっかけは、仕事で生成AIを使い始めたことでした。「これ、健康管理にも使えるのでは?」と思いつき、まずは主治医からもらった検診のデータや、体組成計で得られたデータをAIに読み込ませました。そのうえで、前から気になっていた「スロージョギング」についてAIに相談してみたのです。先に挙げた本に紹介されていた走法です。過去にランニングで膝を痛めた経験があるため、まずはAIにスロージョギングの批判的意見を調べてもらい、リスクと効果を洗い出しました。たとえば靴の選び方は、本ではなくAIのアドバイスに従うことにしました。そのうえで、私が提供した自分の身体に関するデータに基づいて、膝を痛めずに効果を最大化する導入プログラムをAIに作ってもらったのです。実践しながら、定期的にAIでレビューと改良案も得ることにしました。

昔々、国の委託事業として全国の図書館や公民館などの公共施設を会場に「IT講習会」なるものが開催されていました。政府の「e-Japan重点計画」の一環で、2000年代初頭に全国の公共施設などで実施されたことをご記憶の方も多いはず。すべての国民がパソコンやインターネットなどの基礎的な技能を身につけ、情報リテラシーを高めることにより、デジタルデバイド(情報格差)を解消し、IT社会への参加を促進することを目的としていたそうです。

私が思うに、IT講習会ならぬ「AI講習会」を図書館でこそやるべきじゃないでしょうか。実用書を読むこととそれを実行することの間に、通常は大きな溝があるものです。それは、実用書に書かれているのが正確であったとしても、あくまで一般論にほかならないからですが、読書に加えて自分のデータを読み込ませた生成AIを使うことでこの溝を埋め、個別最適な解決策に近づくことが容易になるのです。この方法なら、本と生成AIの相互検証をすることになり、生成AIはウソをつく(いわゆるハルシネーション)という問題もかなりの程度克服できると思います。ビジネス支援・健康支援をはじめとする課題解決支援サービスにおいて、特に効果が高そうです。

図書館が「AI講習会」や「読書×AI」講習会を開催する下準備として、まずは自分自身の課題を「読書×AI」で解決してみてはいかがでしょうか。そこから、図書館×AIの未来が開けてくるかもしれませんよ。ぜひ、お試しあれ。

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