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タイトル 本の風

第1回 「キム・ジヨンが教えてくれること」

 2年前(2019年)くらいから日本で韓国文学が盛り上がっているといわれているのをご存じだろうか? 音楽ではBTS(防弾少年団)がアメリカのビルボードの1位を取ったことでニュースになった。また、時を同じくして映画ではポン・ジュノ監督の『パラサイト』がカンヌ国際映画祭でパルムドール賞、アカデミー賞では作品賞などを受賞した。加えて韓国ドラマも世界から注目されていて、いまや韓国はエンターテイメントの部門でアジアを代表する国になった。ちなみに私の好きなアイドルグループACEもSNSのコメント欄が韓国語、中国語、英語、アラビア語、スペイン語、トルコ語、タイ語などグローバル極まりないので翻訳ソフトの世話になりっぱなしである。

 そこで韓国文学に話を戻すと『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著/斎藤真理子訳)を知っている人もいるだろう。小説のような、長いカルテのような不思議なつくりであるが、一言で言ってしまうと「女は大変」という話である。日本はジェンダーギャップ指数が153カ国中121位となっていて、韓国は108位。大して変わらないじゃないかと思うかもしれないがそれでも日本のほうが男女格差において劣っている。

 この本は韓国では芸能人も政治家も男女問わず多くの人が読んで大変話題になった。なにしろ130万部売れたのだから。日本でここまで1冊のフェミニズムがテーマの本で社会が大騒ぎするだろうか。日本では発行部数が15万部だったので、書評などで話題にはなったものの読者層は圧倒的に女性であり、作者と訳者の講演会や、書店での対談や読書会に私も数回参加したが、男性は数人しか参加しておらず、それはそれで気の毒であった。いまだに男性の育児休暇や有休を取ることが難しい社会で、女性の生きづらさを理解してほしいというのは無理難題なのか。これだけ情報を得やすく、国内だけでなく世界の反応もリアルタイムでわかるようになっていながら、なぜ変えていくことができないのだろう。

 世界では日本は痴漢が多いことで有名だったり、夫婦別姓がいまだに法律で認められていない国であることなど、『82年生まれキム・ジヨン』を読むといままで腑に落ちなかったことをいろいろ考えてしまう。女性が成長していくうちに関わってくる問題を、読者が共有することを目的に書かれた、この本の後に出た『彼女の名前は』はさらに進化している。9歳から69歳までの60人余りの女性にインタビューをして書かれた物語だけに、28の短編ひとつひとつが小さい出来事でも、それが積もり積もると今の生きづらさであり、課題なのだということに気づくことができるので、ぜひご一読をおすすめしたい。

  “キム・ジヨン”が韓国で爆発的に売れていたころソウルの教保文庫(韓国の有名な大型書店)の棚はすごかった。表紙も2種類あってあっちで平積み、こっちで面陳列とこれでもかというくらい置いてあった。そのころ日本で流行っていたのは……。調べたものの頭を抱えてしまうランキングだったのでタイトルは控える。(真)

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