ときどき1冊の本でパッと自分の世界が広がることがある。それはとてもラッキーなことだ。『イグアノドンのツノはなぜきえた? すがたをかえる恐竜たち』(ショーン・ルービン/文・絵 千葉茂樹/訳 岩崎書店)がまさにそんな本だ。普段なら手に取らないタイプの絵本だったが、すすめられて読み返しているうちに、どんどん好きになった。
はるかむかしに一頭のイグアノドンが死んだところから物語が始まる。地表の様子が変わり、人間が登場し神話が生まれ、科学が誕生し、1822年に最『『初のイグアノドンの化石を一人の女性が発見した場面で、扉のタイトルが現われる。映画のようなオープニングだなあと思っていたら、巻末の著者の説明に、「この絵は映画の『ジュラシック・パーク』の冒頭部分の象徴的なシーンをイメージした」、『ジュラシック・パーク』のヒットによって博物館の来館者は増え古生物学を学ぶ学生も増えた。科学が芸術に、そして芸術が科学に影響を与えた。」と書かれているではないか。そうだ、じぶんも昔、『ジュラシック・パーク』の映画に感動して、原作のマイケル・クライトンの本も読んでいたではないかと、さっそく上野の国立科学博物館に足を運んだ。出だしから日本に落ちた隕石に釘付けになり目当ての恐竜になかなかたどり着かない。こんなに楽しいところだったなんてすごいすごい、と思いながら恐竜のフロアに行くと、復元された恐竜たちがたくさんいた。トリケラトプスやティラノザウルスのかっこいいこと。フタバスズキリュウも迫力があった。やっぱり肉食恐竜はいいなあ、など自分の好みも確認しながらじっくりみていたら、あっという間に半日経っていた。歩数計をみると、一万歩も歩いていた。
博物館の余韻を忘れたくないので、今は手元に『せいめいのれきし』(バージニア・リー・バートン/文・絵 いしいももこ/訳 岩波書店)を置いて気の向くまま読んでいる。1964年に出版されたロングセラーの絵本だが、2015年には改訂版も出ている。そこには新たに研究で分かったことが盛り込まれていて、長く愛されているからこその改訂だとわかる。子ども向けの歴史や生き物の図鑑で、年代を確認しながら自分が苦手だと思っていた分野を楽しんでいると、テストも成果も関係なく気ままに本が読めて、大人っていいなあ、としみじみ思うのだった。(真)
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