東北の短い秋は温暖化の影響か、近頃はますますあっという間に過ぎていく。貴重な秋の晴れ間に紅葉狩りを目的にドライブするのが休日の楽しみだ。
窓から眺める山々が、緑の濃淡から少しずつ赤や黄色のカラフルな洋服に着替えるように変化していく様は本当に美しい。通勤路の街路樹も色づき、緑の葉で覆われていたときは気にも留めないのに、これでもかと黄色に光輝く通りに差し掛かると、そうかここは銀杏並木だったのかと気づくのは毎年のお約束である。
銀杏の木になる実。コロコロとした小さなオレンジ色の実が、踏み潰すとたとえようもない臭いを放つことを知ったのは保育園に通った年長の頃。
保育園の前庭には大きな銀杏の木が1本あった。3、4人の子どもの手を繋げてやっと一周するような幹だったと思う。秋の終わりになると、木の下にはたくさんの実が落ち、子どもたちがそれを容赦なく踏み潰すので、辺りはたいへんな臭いだった。
ある日の午後、子どもたちひとりひとりに空き缶と割り箸が配られ、その実を拾うようにと保育士さんが言うではないか!どうやら収穫後、取り出した銀杏(仁)を園では売っていたらしい。今となってはそれってどうなの?な出来事だけど、そこは子どもだから「わぁーークサイクサイーー」と言いながらも、面白がって競うように一心不乱に実を拾っていった。私は年長さんの1年間しか保育園に通っていないので1回だけの貴重な経験だったけど、友人たちはまた今年もやるのねと言わんばかりに、私にやり方を教えてくれたものだ。
あれから何十年も経ち、保育園は別の場所に移ってしまったが、銀杏の木は今でもすくっと空に伸びている。
月に4,5回、小学校での朝の読み聞かせボランティアに行っている。この季節に3年生を担当する時には必ず読むことにしている絵本が『もりのかくれんぼう』(末吉暁子/作、林明子/絵、偕成社、1978年)だ。作者も画家も定評のある、ロングセラーの1冊。
描かれている森は秋の森。落ち葉の上を歩くカサカサした音や枯れ枝のパキパキ折れる音が聞こえてくるようで季節にぴったり。
かくれんぼが大好きなケイコがお兄ちゃんを追いかけて遊んでいるうちに不思議な森へと迷い込む。その森にはかくれんぼが得意な男の子が住んでいた。ケイコが男の子に誘われて、森の動物たちと一緒にかくれんぼをするお話。クマやキツネ、シカやサルなどたくさんの動物が森にかくれている絵はさがし絵のようで、子どもたちが目を凝らして動物をさがす様子はとても楽しい時間だ。
この絵本を教室での読み聞かせに使うときは「ビッグブック」といわれる特大サイズ(縦51cm)のものがおすすめ。さがし絵の部分がとてもよくわかる。教室にビッグブックを抱えて入っただけで「おおぉ」とか「わぁ」とか歓声があがるので、掴みはOKとなるが、大きければなんでもいいわけでもないのでご注意を。公共図書館では所蔵していることが多いので、ぜひ聞いてみてほしい。(石)
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