陸上競技のことを題材にした物語はたくさんあって、様々好んで読んではいるが、以下の4作品は特に好きな作品。
『夏から夏へ』佐藤多佳子/著 集英社 2008年
『風が強く吹いている』三浦しをん/著 新潮社 2006年
『一瞬の風になれ1-3』佐藤多佳子/著 講談社 2006年
『タスキメシ』額賀澪/著 小学館 2015年
『夏から夏へ』は2007年世界陸上でアジア新記録をマークし、08年北京五輪のメダルにすべてを賭ける日本代表チームに密着したノンフィクション。他の3冊は襷やバトンを繋ぐ青春ストーリー。ちょっとした奇跡が起こってたどり着くゴールまでの物語。ぜひとも手にとってほしい。
昨年の11月、詩人の谷川俊太郎さんが亡くなられた。彼の作品を知る人は多いことだろう。詩『生きる』や『朝のリレー』、翻訳『スイミー』は教科書にも載っている。
私の勤務する図書館では、訃報をうけた作家さんなどのコーナーがあり、谷川俊太郎さんはその作品の多さから、様々な本を並べていた。来館者が手にとられる機会も多く、やはり著名な方だったこと感じていた。高校生の女の子たちが懐かしいと言いながら本を見ていたのも印象的だった。
私は図書館で働くようになってから絵本を読む機会が増え、読み聞かせボランティアをしていることもあり、谷川俊太郎さんが翻訳したり文章を書いている絵本に触れることが多い。赤ちゃん絵本の『もこもこもこ』は乳幼児への読み聞かせ会のときには必ず持っていく1冊である。『よるのびょういん』や『こっぷ』などの写真絵本は何度も読み聞かせで使っている。卒業を控えた小学校6年生への読み聞かせの時には『卒業式』という詩を読んでいた。「卒業証書の望遠鏡でのぞく きみの未来」で終わる詩なのだが、ある年の担任の先生から、今の卒業証書は平のままバインダーに入れてあげるのですよと言われ、あららら……と。素敵な詩なのだけれど残念、その後は読んでいない。
授業で暗記するほど音読をした作品がいくつかあるがそのひとつが『朝のリレー』だ。カムチャツカもメキシコもニューヨークもローマも遠い遠い国々なのに、リズミカルに繋がっていくのを想像させられる。まさにリレーしている。こんなふうに何かをリレーできる日々を過ごしたいなと思う。(石)
朝のリレー 谷川俊太郎
カムチャツカの若者が きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は 朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は 柱頭を染める朝陽にウィンクする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
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