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タイトル ライブラリアン・ラプソディ

29 言葉で綴るわたしの一日

 一日はあっという間に過ぎるのに、一週間は長い。「週休5日になりますように」と、七夕の短冊に願いをしたためたのは芸人のヒロシ。「わかるわぁ」、でも一か月は瞬く間に過ぎていく。

 『なんでもない一日の辞典』(山口謠司著;水元さきの画、WAVE出版 2022.9)は、何気ない一日の瞬間を「言葉」を使って丁寧に切り取った一冊である。「目が覚めたとき、どんな光に包まれていましたか?」「学校や会社が終わって、帰宅するときの空の色はどうでしたか?」と、ついつい見過ごしてしまう一瞬を、時間、オノマトペ、テーマとその連想語を瞬間凍結。凍結した透明な箱の中をのぞくと、どんな場面が一日をつくっているのかが見えてくる。とうわけで、なんでもない私の一日は?

《6:00》
ぴかぴか:新しさで輝くさま。まぶしく感じられるさま
むくり:急に起き上がるさま
テーマ:始まり
曙:夜がほのぼのと明けるころ
真っ新:全く新しい。新品の

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

《8:30》
きびきび:態度、動作などが引き締まっていて気持ちがよいさま
かたこと:かたいものが、ふれ合ってたてる小さな音
テーマ:整える
整然:秩序正しく、きちんと整っているさま
調和する:バランスがよく釣り合う

《12:30》
もぐもぐ:くちびるを閉じたまま、何度もかむようす
けたけた:愉快そうに笑う際のかん高くひびく声。また、そのさま
テーマ:リラックス
和気藹々(わきあいあい):人々の間になごやかで楽しい気分が満ちあふれているさま
オプチミスト:楽天主義者

《16:30》
ばたばた:続けざまに軽く打ち合わせる音
こくりこくり:液体を一口ずつ続けて飲み込む音。味わうように飲み込むさま
テーマ:アクセル全開
ラストスパート:最後の頑張り
殺気立つ:殺気が表情や態度に表れる

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

《18:00》
いそいそ:心がはやり、勇むさま。うれしさに心はずませているさま
しんみり:深く心にしに入るさま
テーマ:肩の荷が下りる
カタルシス:抑圧心理の解放
ヒーリング:癒すこと

【解説】
 6:00、平日の朝は忙しい。むくっと起き上がれたらその日は上場の滑りだし。お弁当の準備、時にはシャワー、体のことも考えて朝イチは白湯をいただきましょう。
 8:30、書架整理から一日の仕事は始まる。書架整理とは、分類ごとに本が正しい場所に収まっているか、乱れがないかをチェックする作業である。図書館の基本中の基本の作業、書架も整えつつ、自身の心も体も整えるための準備体操のような大切な時間。因みに英語ではShelf Reading-整えるより書架を読む作業か?目を凝らし、本を整えるカタコトという音が心地いい。
 
 12:30からはランチタイム。「もぐもぐ」とは、「黙々と食べるようすに用いられ、そこには会話はない」とのこと。コロナ禍の代償⁉、展示やイベントの面白いアイディアはランチタイムの他愛もない会話から生まれることが多い。だから‘わいわい’ランチを楽しめる日がきたら、さらなる面白い企画が生まれることを今から期待するばかりである。
 16:30、仕事終了まであと一時間。今日中に終わらせたいことは、この時間にはめどをつけないと!ここからが勝負よ。キーボードを打つ手にも力が入る。でも水分はしっかりとりましょう。脳がビーフジャーキーのようにスカスカにならないように。
 18:00、仕事が終わっての家路はついつい急ぎ足になる。10代のときに夢中で見ていた「ビバリーヒルズ青春白書」が見たいがためでもある。登場人物はみんなマチュアでかっこよく、でも勉強そっちのけで恋愛とパーティーにあけくれる大学生の話だと記憶していた。しかし、貧困や人種問題、さらにはドラックやLGBTと社会派な内容も盛り込まれており、その重層的な内容に改めてハマったのである。懐かしいものにはデトックス効果あり!
 
 なるほど、私の一日はこんな風にできているのか。日常はなんでもないことの繰り返し、だからこそこれらが私をつくってるんだよね。なんでもないことを丁寧に!と誓う2022年師走のとある日なのであった。


参考資料
 『日本語オノマトペ辞典 : 擬音語・擬態語4500』小野正弘編, 小学館 2007.10
 『新明解類語辞典』中村明編, 三省堂 2015.8
 『情景ことば選び辞典』 学研プラス, 2019.8

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