「『鼎談』の『鼎』の字って、カッコいいよね?この字使いたい!」という理由から始まったのが、「としょかんぽう」の新企画、鼎談のコーナー「鼎ダーン」である。
『日本国語大辞典』によると、「鼎」は、「かな-え[・・へ]」、「(「金瓮(かなへ)」の意。『へ』は酒食を入れる容器)」とあり、古く、飲食物を煮るのに用いた金属の器で、元来は、古代中国の祭器であって、炊事用であったが、神にささげる犠牲(いけにえ)を煮るようになって祭器となったそうだ。青銅製で多くは三脚とあり、そこから「鼎談」は三人が向かい合って話すことを意味している。また鼎(かなえ)の造形が、まさに「鼎」という漢字を生んだであろうことが想像され、まさに’漢字萌え’。鼎談にウキウキワクワク「としょかんぽう」制作チームの3人(全員女性!)であった。
さて、第一回目の記念すべき「鼎ダーン」のテーマは「マリトッツォ」。マリトッツォとは、丸いパン生地のような可愛いらしいフォルムに、生クリームがたっぷり入ったイタリア生まれのスイーツ。しかし、マリトッツォ?マリトッツオ?と記述の疑問から始まり、「突如出現して、ヒットしたよね?」と、いつ、どのように日本に入ってきて、人気になったのか?はじめから生クリームが入っていたのか?などなど謎多きスイーツでもある。
早速マリトッツォ試食会を開催、楽しく始まった試食会&鼎談のはずが、すぐに息詰まる。「なんで出てこないの?」マリトッツォの歴史や来歴、進化⁉の過程について記述された資料がなかなか見つからないのである。不確定な情報ばかりがチラホラあるだけ。以前、和×洋の代表的なスイーツ「あんドーナツ」がいつから作られるようになったのかを調べた時も、適当と思われる資料に記述がなく、途中で断念した記憶がある。食に関しては、記録されるよりも流行りすたりが早いのか、同時多発的に各所でオリジナルが作られて事実を一つに特定しづらいのか、理由はともかく時系列的、あるいは体系的にまとめられた文献と巡り合うのは難しいのである。
まずはイタリア語辞典でその存在をチェック、と、そのまえにマリトッツォのスペルから。こういうときはWikipediaを活用、情報全体の信憑性は低いが、ここに書かれている参考文献などは調査には役に立つのである。‘maritozzo’であることが判明し、小学館の伊和中辞典(第2版、1999)を開くと、「干しブドウ入り菓子パン」とある。ここからが長~い道程、新聞のデータベース、百科事典、『完成版イタリア料理手帖 知ればもっとおいしい!食通の常識』(池田愛美著、世界文化社 2016)、『ケーキ、焼菓子、おやつを買いに。MAGAZINE HOUSE MOOK Hanako sweets』(マガジンハウス 2021)、『イタリアの地方菓子とパン』(須山雄子著、世界文化社 2017)などなど、様々な文献を検索し鼎談、また調べて鼎談、さらに調べて鼎談・・・・と、鼎談を満喫しながら「鼎ダーン」は、レファレンスとはなんぞや?を指南するという内容になったのである。
第2回目の「鼎ダーン」は、カプセルトイについて。お金を入れてバーを回すと、何かが入ったカプセルが出てくる、ちょっとしたギャンブル感を味わえるアレである。土偶や埴輪のぬいぐるみやリアルな昆虫トイ、カリモクや天童木工のミニチュアなど種類も様々、今や街中にカプセルトイ専門店ができるほどの人気である。カプセルトイ好きの我々にとっては絶好のネタ!こちらも実際にお店に出向いて体験しつつ、状況のレポートとともに鼎談を開催。そして「鼎ダーン」は、著作権についての説明へと続くのである(詳細は、東北福祉大学図書館ホームページ参照)。
ライブラリアンの素質の一つは好奇心(でしょ!)。その範囲は様々だけれど、それを共有する能力にも長けているように思う。だから心のおもむくままに、「鼎ダーン」は私たちの密かな楽しみの仕事となったのである。
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