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タイトル ライブラリアン・ラプソディ

19 雑誌に彷徨う

 2021年12月22日午後3時13分ごろ、驚きの通知が飛び込んできた。「重大」という赤い文字と共に、政府発表「ゲリラや特殊部隊による攻撃が発生しました。」というものである。「えっ、日本でテロ?」と思う一方、「ゲリラと特殊部隊って行動を一緒にするもの?」とも。時を待たずして、Yahoo系のアプリから誤配信であることの「おわび」が届く。一件落着。でも、である。「こんな文章用意してるの?」という戸惑いと、「ゲリラと特殊部隊って、相反するものじゃない?」という内容の整合性への困惑。

 『日本国語大辞典』によるゲリラは、「({スペイン}guerrilla )。ゲリラ戦を行なう部隊、あるいは戦闘員。」とあり、「ゲリラ戦」を見ると、「小部隊で敵のすきをうかがい、小戦闘や奇襲をくり返して、敵をかき乱す戦法。遊撃戦法。ゲリラ。」とある。そもそも‘敵’が存在するのである。敵って、日本国民ってこと?また、ここで言う‘特殊部隊’とは?想像するに、法執行機関に設置されている警察や自衛隊などのいわゆる国家公務員を指すのではないの?だから、一見すると敵と味方が入り乱れて私たちを攻撃してくる地獄絵図が脳裏に浮かぶ。この世の終わり、たまったものではない!

 さて、扶桑社発行の『MAMOR』は、日本で唯一の防衛省のオフィシャルマガジンである。「日本の防衛のこと、もっと知りたい!」というサブタイトル通り、日本の防衛を担っている防衛相や自衛隊の活動が紹介されているユニークで、そしてマニアックな雑誌の一つ。毎号様々な特集が組まれ、数年前のある号の特集は「危機から命を守る脱出術入門」というもの。自然災害から逃れる方法から、かなり特殊なケースまでイラスト付きで対処法が掲載されている。まず「地震直後の屋内からの脱出」では、新聞紙を足袋代わりにして移動する方法、また「大雨でドアが開かない自動車からの脱出方法」では、窓ガラスの隙間にヘッドレストの軸をねじこむ方法がわかりやすく解説されている。なるほどしっかり覚えておこう!
 さらに事態はエスカレートし、「業務用冷凍庫からの脱出」や「銃を突きつけられた際の脱出」、そして「核爆弾が飛来した際の脱出」と事故、犯罪、テロと深刻さは増していくが、こんな脱出方法、絶対経験したくないぞ!このように、あらゆる事態が想定されているのだが、ゲリラや特殊部隊に攻撃された際の脱出方法は残念ながらここには登場しない。トホホ、どうしましょう・・・。

挿絵
※挿絵はクリックで拡大します。

 私が心待ちにしているのは、『季刊iichiko』である。みなさんご存じ麦焼酎「いいちこ」の三和酒類(株)が1986年から刊行している文化学誌である。場所に根差した文化、民俗と精神というテーマを軸に人類の文化遺産をさまざまな角度から検証する意欲的な雑誌である。同僚の間でもファンは多い。
 151号の特集は「笛の日本文化」と興味深い。フルートなどの西洋の管楽器とは違い、自然の竹から作られる笛は、「生きているもの」を扱う笛師とそれを奏でる奏者のそれぞれの鍛錬と工夫、情熱や情念がストレートに魂に響いてくるものだということがわかる。この雑誌の追求する日本文化や日本語の「述語制」や「非分離」という点にも絡めて言及されていて、笛の世界観の神髄を垣間見ることができる。ここに「味わい=文化」に対するiichikoの情念を感じるのである。

 人、場所、モノ、時間を超えて、人は情熱や情念を帯びたものに無関心ではいられない。ライブラリアンとしての情熱や情念を持ち続けたい!と思いながら、‘いいちこ’をあおり夜は更けていくのであった。

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