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タイトル ライブラリアン・ラプソディ

18 2022年の歩き方

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

 海の見える温泉につかりながら、部屋の観葉植物に肥料をやらないと!と、ふと考えつつ、日ごろの疲れをリフレッシュ。夕食は、美味しい鉄板焼きが待っている。シメは、名物のプリプリ牡蠣入り海鮮お好み焼き。デザートはとびきり甘いお芋でつくった大学いも。「働いた分はしっかり休みをとらないとね!」満たされた欲望、身体も心も生き返るよう。来週は、ヨガ教室の予定を入れているから、お気に入りのモスグリーンのカーディガンを羽織ろう。それから、筋肉には十分な水分が必要だから、水筒には天然水をたっぷり持っていかなくちゃ。

 『日経woman』に登場しそうな、プライベートも何がなんでも充実させちゃうバリキャリ女子のようだけどね、これ占いによる2022年の私の正しい歩き方なのである。どうだ!私だって出来る女‘風’になれるんだもんねー。と、心は永遠の中学2年生。中2かぁ、「中二病」ってこと?『日本大百科全書』によると、「中学校2年生ぐらいの子供にありがちな言動や態度を表す俗語。自分をよくみせるための背伸びや、自己顕示欲と劣等感を交錯させたひねくれた物言いなどが典型で、思春期特有の不安定な精神状態による言動と考えられる。」とのこと。医学的な治療は必要ないらしいから、まずは一安心。と、こちらも占いによる私の基本の性格。さらに、ほかの占いによると超マイペースな平和主義者(らしい)、加えて人生を楽しむことに長けている(らしい)と。平和主義者で、人生を謳歌するマイペースな中二って、孔子も驚愕の「不惑(ふわく)の年」である。

 さて、古代文明において占いは未来予知のための学問であり、技術であり、国家体制を維持するための基幹学問であった。陰陽道も『易学』に由来する占いで、政を司る重要な役割を果たしていた。未知予測のため、膨大な天体の観測の記録から、その意味を読み取ろうとしたのが占星術である。その起源はバビロニアまでさかのぼる。その後、ギリシアで発展したホロスコープ占星術は、インドに渡り変容し、さらに中国の要素も混じり、日本へと伝わるのである。まさに古代の文化交流の縮図なのだと、『星占いの文化交流史』の著者矢野道雄は語る。

 未来に対する怖れや見えないものへの不安は今も昔も変わらない。2021年10月の日本出版販売(株)調べ、月刊ベストセラー第一位は、たつき諒の『私が見た未来 : 完全版』である。彼女の夢日記をもとに書かれたこの本は、1999年に刊行された『私が見た未来』の復刻である。先に出版された本の表紙には、「大災害は2011年3月」とあり、東日本大震災を予言した漫画家、幻の予言漫画として注目を集め、2021年10月に新たな‘予言’とともに完全版として刊行された。ここに描かれるのは、さらなる大災害の夢の内容とその後に訪れる明るい未来像。「怖いもの見たさで、読んじゃったよー」と同僚と動揺しつつ、「知りたいって好奇心には勝てないね」というコメントで一応は落ち着いたのだが・・・。さぁ、あなたは読みますか?

 不安な時に決まって開くのは、哲学者池田晶子の本である。彼女は言う。「悩むな、考えろ!」と。人生先が見えないのは当たりまえ、だから生きていられるのだと、「何を悩むことがある、考えろ」と。彼女は以前、「池田が文部大臣になった時には、哲人国家の理念は必ず現実のものとなりましょう」と言ってたっけ。これこそまさに、明るい未来だと思うのだが、そう思うのはきっと私だけではないはずだ。どう生きるかを考えるまえに、生きるとはどういうことかを考える、みんなで明るい未来を手にしようではありませんか。

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