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タイトル ライブラリアン・ラプソディ

17 般若湯 〜知恵のわきいずるお湯〜

 アルコール好きのあるあると言えば、酔っぱらっての失敗談である。武勇伝的に語られることもあって、「酒の肴だ!」とばかりに、話をつまみにさらに呑みすぎちゃうというエンドレスな状況となる。さて、気が付いたら植込みの中に居た人、同僚の犬に抱きつき絡んだ人(犬の嗅覚をもってしたらアルコールの匂いキツかっただろうなぁ)、室内にロングブーツが整然と並んでいた人、目覚めたらクラムチャウウダーが出来上がっていた人、電話で兄に罵詈雑言をならべうっぷんを晴らした人など、強者ライブラリアンぞろいである。

 「veisalgia」とは、二日酔いを表す医学用語で、「飲酒後の不快症状」を意味するノルウェー語「kveis」と、「痛み」を意味するギリシャ語の「algia」を組み合わせた造語であるという。‘不快感と痛み’、祭りの後の虚しさに似て、浮かれた末の後遺症ともいえる。失敗談同様、二日酔いの悲惨さ自慢も面白い。いかに二日酔いがひどく、どう耐え忍んだか、対処法は?など話題は尽きない。2013年1月のネット版『ナショナル・ジオグラフィック』の「二日酔いの治療法、世界でさまざま」は興味深い。ドイツではニシンの酢漬け、アメリカでは生卵入りトマトジュース、中国では濃い緑茶、日本は梅干など、‘ところ変われば’な対処法が紹介されているが、ところ変わっても二日酔いは世界共通のやっかいごとなのは確かなようだ。

 サントリーのホームページ、「DRINK SMART:お酒との正しい付き合い方を考えよう」によると、「口から入ったアルコールは、胃で約20%、残りの大部分は小腸で吸収され、血液に溶け込み肝臓に送られる。肝臓では、主にADH(アルコール脱水素酵素)の働きによって「アセトアルデヒド」という有害物質に分解され、さらにALDH(アルデヒド脱水素酵素)の働きによって無害な酢酸へと変化する。アセトアルデヒドはお酒を飲んだときに顔が赤くなったり、動悸や吐き気、頭痛などの原因となる物質である。肝臓は、いわゆるアルコールの分解が行われる「処理工場」で、その分解スピードには個人差があるが、一般的に体重約60kg〜70kgの人で1時間におよそ5g〜7g程度。ビールロング缶(500ml1缶、アルコール含有量20g)のアルコールを分解するには約3〜4時間かかる」という。う〜ん、宴会時のアルコール摂取量と分解速度が全くマッチしていないことが判明!目を背けてきた事実、「肝臓くん、酷使してきてごめんね」と思わずにはいられない。

 『飲まない生き方ソバーキュリアス』は、アルコールとの付き合い方を考える一助となる一冊である。「ソバーキュリアス」とは、「sober」‘しらふ=お酒を飲まない’ことと、「curious」’興味のある、〜したがる’を掛け合わせた造語で、「酒をやめると気分は良くなるのか」、「もっと自信がつく?」、「飲まなければ、ヤセる?若返る?」など、アルコールに関する疑問を好奇心を持って考えること、また自分の意思でアルコールを飲まない大人のことを指す。つまり、「なぜアルコールを欲するのか?」をマジメに考えるということ。アルコールの分解スピードに続き、またしても目を背けたい現実を突きつけられる。「なぜアルコールなの?」と。

 仲間と楽しい時間を共有するため、日ごろのモヤモヤをグイッと流し込むため、ちょっぴり現実逃避したいときアルコールは頼もしい助っ人となる。しかしそれは、ソバーキュリアンからすると、不安や怖れといった精神的な問題を棚上げし、物事の根本的な解決にはならないと。
 でもね、長田弘の「テキーラの飲みかた」(『食卓一期一会』所収)の一説をみてごらん。なんだか、人間であることが愛おしく思えないだろうか?同じ空の下、日々を案じながら生きていることを実感できるではないか。

「空を仰いできりりとテキーラをやる。
 アミーゴ、アミーゴ 
 今日を嘆息してどうなるものか。
 アスタ・マニャーナー(絶望は明日してもおそくない)」

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

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