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タイトル ライブラリアン・ラプソディ

15 インクルージョン&ダイバーシティ

 図書館にやってくるのは人間ばかりとはかぎらない。ある時はネコ、またある時はハト、それから雀にコウモリ、オニヤンマ、まるで動物園である。動物までもがやってくるゆかいな図書館、絵本の世界みたいでステキ!ノンノンそうとばかりも言っていられないのが現実である。

 ある好日、新鮮な空気とともに窓から訪ねてきたのはハトである。ピカソ作の「鳩」はパリで開催された国際平和会議のポスターの原画として制作され、平和の象徴として私たちの記憶に刻まれている。そんなハトだから、安らぎを運んでくれると思いきや、いやいや館内は平和ではいられない。箒や長い棒でなんとかハトの追出しに挑むが、人間に追い立てられてハトも焦ってか、アチコチにぶつかりながら館内を右往左往、同様人間も右往左往である。なんとか部屋の端っこに追い込み、段ボールでの捕獲に成功。窓から脱出させ一見落着。と思ったのもつかの間、またもや同じ(と思う!)ハトが再訪。図書館好きのハトね、でも今回ばかりはうれしくないぞ!

 大学の最寄り駅、学生でごった返す駅構内、なのになぜか出入口が一カ所ふさがれている。ん?どうした?なんと出入口にツバメの巣ができているではないか!「ツバメの巣があるため開閉禁止」との貼り紙が。ツバメファーストかぁ、後日3羽のひなは無事に巣立っていったのである。
 男子バレー部の部室にはなんとハトの巣が!しかも卵まで産んでいる様子。なぜ今まで誰も気づかなかったの?岩手県、三陸銘菓「かもめの玉子」、ならぬ「ハトのたまご」。あんまり美味しそうじゃないか。街の中心部からは少し離れた、山側に立地している大学ならではの珍事、‘勿怪の幸い’となればいいのだが。
 
 「鳥獣保護管理法8条」により、原則として「鳥獣を捕獲・殺傷したり、鳥類の卵を採取・損傷したりすること」は禁止されている。ツバメもハトも「鳥獣」に含まれるため、その捕獲・殺傷や、卵の採取・損傷が禁じられ、これに違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性があるとのこと、一大事である。やむを得ない理由で巣を撤去したい場合は、自治体に相談し鳥獣による生活環境被害を防止する目的などが認められれば、捕獲や採取に関する許可が出る場合があるらしい。しかしこういう場合、法の効力というよりも、人間側の温かな眼差しと寛容さが試されているような気がしてならない。「幸福な王子」ならぬ、「幸福なツバメ」の物語。

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

 「ネコ館内立ち入り禁止」のポスターは、ネコの絵に禁止マークを重ねたシンプルなもの。人間は腰を折らないと読めない位置に貼られたそのポスターは、ネコへの警告だから、ポスター位置もネコ目線で!ネコへのホスピタリティである。図書館サービスはまさにこの視点が大事、利用者側の目線に立って、かゆいところに手が届くようなサービスを常に考えたいものである。

 夕暮れの閲覧室。堂々と飛び回るのはコウモリである。どこに隠れていたのか、バタバタと翼の音を響かせて、頭上を掠めていく。本に夢中なコウモリが登場する絵本、『コウモリとしょかんへいく』の世界じゃない!だが、のんきなことは言っていられない。どうやって捕まえればいいの?

 雀は図書館の常連である。だから常々、雀の恩返しやハトの恩返しを待っているのだが、一向に来てくれない。ハトはJAの帽子をかぶった鳩胸のおじさんとなって登場するに違いない。重い荷物を運んでくれたり、電球をマメに交換してくれたりと働きもののはず。オニヤンマは、おやつを運んできてくれる心優しい青年であろう。コウモリの恩返しは、なんだか不気味な感じがするからお断りしようか、と同僚と妄想している。「動物園と図書館が一緒だったら素敵じゃない?」と、他大学の図書館員Hさんの発言を思い出す。究極のダイバーシティとも言えるが、「動物との共生(インクルージョン)って、人間にはシンドイです。」と伝えよう。

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