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タイトル ライブラリアン・ラプソディ

11 色、イロいろ だけど・・・むらさき

 つまらない。気分がのらない、面白くない。あれっ、三無斎!?
 外食もままならず、旅行もできず、甥っ子、姪っ子にも会えない、ストレスフルな彩のない生活。何とかしてよ~、と目に留まったのが『鉱物のお菓子』。鉱物を「美味しそう」と思った著者が、鉱物を模してリキュールなどで色付けしてつくったお菓子のレシピ本。キラキラしていて色がきれいでついつい見とれてしまう。「キレイだなぁ」、やっぱり日常には彩は必要なのよ!

 小学生のマストアイテム「サクラクレパス」は、夏休みの宿題の思い出とともに、そのパッケージは脳裏に刻まれている。今年で創業100年を迎え、これと時を同じくしてつくられたのが時計メーカーとのコラボ商品、100色展開のクレパス柄トケイである。懐かしいサクラクレパスにノスタルジーを感じながら、その色のグラデーションに思わずトキメク。パステルカラーにビビット系と同じ色でもバリエーションが豊富、ついにパステルなライト・ラベンダー色が私の腕に新たな色を添えたのである。「テンション上がるよね♪」それもそのはず、ある調査では、かわいいと感じるものの一つにパステルカラーが入るらしく、またかわいいという感情と快適性や活動性には相関関係があり、かわいいと感じるとその両方が上がるというのだ。やっぱり‘かわいい’は無敵なのだ。

挿絵
※挿絵はクリックで拡大します。

 さて、このライト・ラベンダー色、日本の伝統的な表現でいうと藤色になるだろう。職場の近くに「子平町の藤」(またまた子平登場!)がある。仙台市指定保存樹木にもなっており、秀吉の命で朝鮮に出兵した政宗が持ち帰った歴史のある藤、現在も毎年美しい花を咲かせている。頭上から藤色の滝のように花が咲き乱れ、その香りもあいまって妖艶な様子である。
 日本人の色彩嗜好の動向を調査したデータには、なかなか面白い傾向が導き出されている(注*)。日本人の色の好みの累計は、明るい色を好むタイプと暗い色を好むタイプがあり、次に鮮やかな原色調を好むタイプと落ち着いた中間色調を好むタイプに区別され、さらに紫色を好む人と嫌いな人というグループが認められるという。この紫好きは、生活面でも意識面でも「ゆとり」のようなものが感じられ、他の類型に属する人よりも生活状態と意識の間のバランスがとれていると紹介されている。あなたの周りの「紫好き」さんはどうですか?

 江戸時代後期の琳派の絵師、鈴木其一の「朝顔図屏風」は大きな花の群青と、身をくねらせるようにうごめく葉と茎の緑青が艶めかしい。彼の父親は、紫染の職人であった。紫染は染物の中でもいちばん格が高く、「紫師」と呼ばれ他の染物職人とは別格だったそう。古代紫ともいう赤みがかった京紫は、日本で初めて官位が定められたときから高貴な人しか身につけられない禁色であった。一方、青みがかった江戸紫は「いき」な色として江戸っこの自慢だったらしい。

 カメレオンのような性質を持つ鉱石アレキサンドライトは6月の誕生石。ある時は青みがかったグリーン、ある時はオレンジ、またある時は赤紫と、光の種類や見る角度によって様々な色を見せる。これは鉱物が複雑な方法で光を吸収することに由来するが、紫陽花は土の酸性度よって青やピンク、紫など様々な色の花を咲かせる。こちらも職場の近くにある「あじさい寺」と言われる資福寺は、敷地内に1200株ほどの紫陽花が植えられ、6月の梅雨の時期になると境内の随所で一斉に花が咲き圧巻である。あらっ、気が付いたらスクールカラーもむらさき。むらさきに囲まれる生活、私の精神状態はきっと安定しているにちがいない。

(注*)
『色の名前はどこからきたか : その意味と文化』福田邦夫著 青娥書房 1999
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