2021年が始まった。Happy New Year! ハッピーを願わずにはいられない年の始まり。
ハッピーを願ってタイトルはおせち料理を並べてみたが、ぜひ‘七草粥’のリズムで読んでほしい。めでたい気分になったでしょ?
さて、例年であれば、新年最初の図書館展示企画は福袋ならぬ‘ぷく袋’。幸運を運ぶ七星てんとう虫をモチーフにした図書館キャラクターの「ぷくてん」×福袋で‘ぷく袋’である。なんと言っても企画する私たちがトキメク展示である。それぞれ袋に入れる本を決め、本のオビを使ったり、折り紙に色画用紙、マスキングテープを施したりと各々のスキルとアイディアを活かし袋にデコレーションしながら、「借りてちょうだいね!」との思いも込めて、自身の選書眼と創作技の力試しのような気分でもある。また借りる側は、ロシアンルーレット的でもあり、運だめし的でもあり、年の始めの企画としては華やかで心躍るものとなる。しかし、現在は制限付きの図書館利用となり、これもかなわず静かな年の始めである。
2020年、私たちの周りには耳慣れないことばが蔓延した。ソーシャルディスタンス、三密、クラスター、不要不急、オーバーシュート、除菌・殺菌・滅菌など、どれもコロナ禍で氾濫していることばである。いずれもあまり喜ばしいものではないし、ステイホーム、Go To トラベル、Go Toイート、これらのことばに敏感になりながらも、簡素化されたキャッチーな表現に、事象もさることながらちょっと困惑しているのも事実。そんな中私たちを和ませてくれるのは、アマビエやヨゲンノトリといった神秘的なひびき。
アマビエは、京都大学附属図書館の所蔵資料である、江戸時代後期に書かれた瓦版に登場する。魚のようなウロコと尾ビレのついた身体をもち、人間のような黒髪に、口は鳥のようにとがり、光輝く瞳をもつ。疫病を予言し、疫病が流行ったときにはその姿を描き写した絵を人々に見せなさいと記してある。一方、ヨゲンノトリは山梨県立博物館が所蔵する『暴瀉病流行日記』にその挿絵とともに登場。当時流行していた「暴瀉病(コレラ)」をヨゲンノトリを信心することで難を逃れられるだろうとのうわさ話を書き残したものである。アマビエもヨゲンノトリもその存在の真偽は別として、窒息しそうな閉塞感から一瞬解放してくれる希望の光となった。これら江戸時代の文書を紐解いて、現代のヒントとなるような「光明」を見出すとき、歴史や文化を蓄積、継承する図書館や博物館の果たす役割を改めて思うのである。
読売新聞社が読書週間(10月27日~11月9日)を前に行った世論調査では、新型コロナの感性が拡大した後、読書時間が「増えた」と答えたのは12%、また直近一か月に本を読んだ人に限定すると「増えた」が25%となった。ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授は、「人生百年時代」というフレーズの提唱者であり、人材論・組織論の権威として知られた人物である。『コロナ後の世界』の中で彼女は、人生百年時代にあって「無形資産」の重要性を説いている。それは、社会や組織に頼らない自身のスキルやキャリアに基づいた人間関係の構築や肉体的・精神的な健康を保つこと、変化する社会や自身の心身の状態の変化に向き合いつつ、性別・年代・仕事・国籍を超えた人たちと関わりを持つこと。加えてポスト・コロナ時代には、「透明性」、「共同創造」、「忍耐力」、「平静さ」も重要だとも。彼女が言うように、何かが変わりつつある今、私たち自身も変わるための新たな学びを始めなければならない。
「自由とは、どこかへ立ち去ることではない。考えぶかくここに生きることが、自由だ。樹のように、空と土のあいだで。」との長田弘の「空と土のあいだで」の一節を胸に、歴史に学びつつ、風のように自由な思考と夢想や想像をともなうフレームなしに周囲を観察し、想像する「微候な知性」(白石嘉治提唱『思想としての「新型コロナウイルス禍」』参照)を求めて羽ばたこう!
design pondt.com テンプレート