「これ、アグリゲータだよね。エンバーゴ調べてくれる?うーん、アーカイバルアクセスの保証ないよね。」
ご理解いただけただろうか?
ワニが大きな口を開けて、飼育員が虫歯の数を数えている場面を思い浮かべたあなた、ブラボー!素晴らしい想像力の持ち主である。が、残念ながら不正解。
まず、アグリゲータとは複数の出版社の電子ジャーナル(EJ)を分野ごとにまとめて提供する業者のことで、いわゆる複数のブランド品を集めたセレクトショップのようなものを想像してほしい。電子ジャーナルを横断的に検索でき、フルテキスト(全文)も見ることができるが、刊行後一定期間は提供禁止(エンバーゴ)などの制約があり、例えば最新の論文が読めるのは半年後という具合である。またこのサービスでは、契約期間中は学術情報データを自由に見ることができるが、契約を中止した時点でそれらの情報は一切見ることが出来なくなる(形のないものの最大のネガティブ要素!)。
と、こんなことを話題にしていたのである。
タツ実:「ラビット社のSSHパッケージのPyonPyon誌、今度からOAに移行するね。」
ウサ世:「コアタイトルだったので、パッケージの金額下がりますね!それからドラゴン社からBandの確認きてます。FTE出しときますね。」
大学図書館の雑誌担当者にとって、これはまだ初歩的な会話といえる。何が?というと、電子ジャーナルの契約に際してのやり取りで、契約は基本的にジャン・デックなので9月中旬ぐらいになると頻繁にこのような言語が飛び交うのである。あらっ、ここでも不思議なワードが出てきましたね。ジャン・デック=Jan-Dec、口どけなめらかな新発売のチョコレートではありませんよ!契約期間が1月-12月のこと(年度ではなく)、January-Decemberを訳してこう表すのである。
さて上記の会話の解説をしてみよう。SSHは、社会科学・人文科学の分野を指し、Social ScienceとHumanitiesの頭文字を取っていて、HSSとも言う(同様にSTMは、科学・技術・医学の分野のこと)。パッケージは、該当分野の複数タイトルをセット化して出版社が提供する形態のもので、パッケージ契約をすると自館で実際に契約しているタイトル数(コアタイトル)よりもはるかに多くのタイトルを利用できるというメリットがある。例えば、10誌契約するのとさほど変わらない契約金額でパッケージ内の300誌が飲み放題、いやいや読み放題!とういうわけである。凄いでしょ?でもでも、である。沼地にはまる恐怖とでもいおうか、‘あったものが無くなる’不安から契約し続けなければ!というプレッシャーと価格高騰や雑誌の移管といった脅威が常につきまとう。ちなみに、アグリゲータとパッケージの違いの一つは情報の鮮度である。後者は、最新の情報をいち早く入手できるが割高となる(だから医学系や工学系などは高額!)。
上記は良い例で、パッケージ内のコアタイトルであるPyonPyon誌が、OAつまりオープンアクセスとなり、この電子コンテンツには無料でアクセスできるようになるという事。たいていの場合、研究や教育などの目的で自由に利用ができる。近年、全世界的にこのOA化が進んでおり(様々なケースあり)、これを視野にいれた出版社の新しい提案も出てきている。話を戻すと、コアタイトルの合計金額をベースにパッケージの契約金額が決まるので、1誌でも減るとそれだけ経費が抑えられるのだ。それでなくても、図書館は‘金食い虫’なんて揶揄されることもあり、誰のためよ?と思いながらもヤッター!である。さてさて、Bandは電子的コンテンツを契約する際の出版社による価格設定方法の一つで、購読機関の教職員や学生などの構成員数(FTE)などがそれである。
さらに、プライスキャップやリバースチャージ、APCにアクティベートなど、次々と呪文のような言語がこの時期ささやかれる、いや響き渡るのである。言語の習得はトレーニングに近いらしいから、呪文のための筋トレをさぁ明日から?!(今日からじゃなくて!)始めよう。
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