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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第40回 「図書館では運動・睡眠・瞑想を止めるな」宣言

「図書館では読書を止めるな」は当たり前ですが、前回は「会話(対話)も止めるな」と書きました。近年では大学図書館を中心に、デジタル・デバイスによる「読み書き」を積極的に認める図書館も増えています。図に乗るわけではありませんが、ここで新たな提案です。

図書館では運動・睡眠・瞑想を止めるな!

挿絵
※挿絵はクリックで拡大します。

そう考えたきっかけは、『BRAIN WORKOUT(ブレイン・ワークアウト)』(2023年、KADOKAWA刊)を読んだことでした。著者は、先端技術に関する投資とコンサルティングに携わる安川新一郎氏。「人工知能(AI)と共存するための人間知性(HI)の鍛え方」という副題のとおり、AI時代を生き抜くために人間の知性をアップデートするトレーニング(ワークアウト)を提案しています。20のワークアウト・メニューは、脳の6つのモードに合わせて体系化されており、それらのモードを人類の進化の過程にそって並べると、運動モード、睡眠モード、瞑想モード、対話モード、読書モード、デジタルモードとなるそうです。

常識的には、図書館は読書モードを支える装置です。近年は、これにデジタルを加えるべき、とか、前回書いたように会話(対話)も必要じゃないか、といった議論がされるようになりました。でも、本書の示唆に従えば、図書館が対話・読書・デジタルの各モードに対応したところで、6つのモードの半分をカバーしたことにしかならないのですよ。

図書館が、脳のすべてのモードのワークアウトを支援する装置になったら素敵じゃないか。そんな思いから、今回は運動・睡眠・瞑想の3つについてアイデアを素描してみます。

まず、運動。

私は週に数回、スポーツジムに通っています。そこにはトレッドミルや、フィットネスバイクが置いてあるのですが、これらは図書館にこそふさわしい器具かもしれません。トレッドミルの上を走ったり、バイクを漕いだりするときにデバイスで電子書籍を読む、あるいはヘッドフォンを装着して朗読を聴くことができるのですから。

次に、睡眠。

休日の昼下がりともなると、図書館内の所々でいびきが聞こえます。居眠りを起こして回るのも図書館員の仕事ですが、起こす方も起こされる方もきまりが悪いもの。仮眠専用のスペースがあれば、お互いに気持ちが楽になると思いますよ。数分でも仮眠をとってスッキリすると、読書や学習の効果がテキメンに上がるはず。余談ですが、私が研修などの講師を務めるときは、最初に必ず「眠くなったら寝てください。数分でも仮眠をとると、その後、集中できますよ」とアナウンスしています。

最後に、瞑想。

私が夢見るのは、図書館に電子デバイス持込禁止の瞑想ルームを併設することです。そこには本も必要ないでしょう。あれば読みたくなりますからね。私が勤務したことのある静岡市内のある美術館には、展示物を置かない前提で設えられた「祈りの部屋」というスペースがありました。脳内に溜まった膨大な情報を、自分自身と対話しながらゆっくり消化するための場が図書館にあるのは、素敵だと思いませんか。

一つでも実現すれば、それは図書館が「まち一番の脳に効く施設」に生まれ変わる第一歩です。何か、すごいテクノロジーが必要というわけもありません。運動・睡眠・瞑想“も”できるサービス・プログラムを、ぜひお試しあれ。

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