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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第20回 図書館ほど素敵な商売の種はない

今回は、この夏読んだ、抜群に面白いビジネス書を紹介しましょう。
図書館を徹底的に使い倒して富を得る方法が書いてあるのです。
「ああ、図書館でビジネス書を読むんでしょ。でも、私が普段使う図書館にはビジネス書が少ししかないんですよ。」

残念。違います。
ビジネス支援を看板に掲げるような図書館である必要はないのです。
エリック・ジョーゲンソンという人が編んだ『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』(サンマーク出版)を読んで得心しました。

この本は、シリコンバレーのエンジェル投資家として名高いナヴァル・ラディカントのツィートとインタビューを集めたものです。
彼は1974年にインドで生まれ、9歳の時に家族とニューヨークに移住しました。
ニューヨークの公共図書館が学童保育所の代わりだったと自ら語っています。
最初はちょっと怪しげなタイトルだと思ったのですが(失礼)、末尾の愛読書リストにタレブのエッセイ『身銭を切れ』、ヘッセの小説『シッダルタ』、ジブランの詩集『預言者』と、私の大好きな本が3冊も入っていたので、俄然、読む気になりました。
前半では富、後半では幸福について語られていますが、前半の最後、富と幸福の橋渡しをするようにまとめられた読書論こそ、本書の読みどころ。ちょっとだけ引用します。

<図書館に行って、理解できない本があったら、「これを学ぶための基礎知識は何か?」と掘り下げて考えよう。基礎がとにかく大切だ。>
<何であれ、今、流行りのものを追いかけるより、君の知的好奇心を追求しよう。君が好奇心のおもむくままにたどり着いた場所が、社会が向かおうとしている場所と一致したそのとき、君は莫大な見返りを手にできるはずだ。>
<原典を基礎として始めると、しっかりした世界観と理解を築くことができるから、どんな本も怖くなくなる。そうすれば、思いっきり学べる。継続的な学習習慣が身についていたら、お金を稼ぐ方法はいくらでも見つかる。>

実は、私も図書館勤務2年目の頃から「そもそも図書館って?」という好奇心が止まらなくなりました。館内にある図書館情報学周辺の本を読み漁り、これはと思うものには身銭を切ったものです。読む本を選ぶ目安は自分の好奇心しかなかったけど、それがよかったのかもしれません。今も私の好奇心は駆動中で、図書館情報学に限らず、学びたい分野、読みたい本が増え続けています。図書館情報学からどれだけ離れても、自分なりに図書館に関連づけて読みこんでしまうところが我ながら愉快です。こんな読書法を実践してきたからこそ、現場を退いてからも図書館を自分のビジネスにつなげることができているのでしょうね。

挿絵
※挿絵はクリックで拡大します。

不安定な雇用、迫る定年…将来への不安な思いを抱えながら図書館で働いているみなさん。あなたが働く、その場所にこそ財宝が埋まっているのです。好奇心というスコップを振るって、あなただけのお宝を掘り出しましょう。あらたなキャリアへの展望が開けるかもしれませんよ。お試しあれ。

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