前回、図書館は「死者の民主主義の砦」じゃないか、と書きました。
でも、著者の生死を問わず、受け身で本を読んでいるだけでは、民主主義は実現できないだろうな。
そんなことを考えていたら、面白い実践に出会いました。
デモクラシー・フィットネス。
デンマーク発、市民の「一人ひとりがデモクラシーを身につけるためのトレーニング」です。
生きている者だけの多数決で大切なことを決めてはならない、というのが「死者の民主主義」の考え方でした。
デモクラシー・フィットネスは、そもそも多数決の前に、日々のくらしの中でコミュニケーションとディスカッションを積み重ねるのが真の民主主義、という考えにもとづいているとのこと。
そのために必要な考え方やスキルは「深く聴く筋肉」「反対意見を表明する筋肉」「意見を育てる筋肉」など8つの筋肉にたとえられ、それぞれを鍛えるトレーニング・メニューがあるそうです。(デモクラシー・フィットネス・ジャパンのフェイスブック公開グループページより https://www.facebook.com/groups/206927760720082/)
これはぜひ体験したいと思い立ち、10月8日、公認講師の藤田さなえさんとクロマン・ソーレンさんによるトレーニングにリモートで参加しました。「反対表明筋」を鍛える、というのがこの回のテーマです。
参加者は2人ずつの組に分かれてトレーニングします。あるテーマについて、賛成の人と反対の人がペアになるのです。今回のテーマは「飲酒を開始する年齢を引き下げてよいか」と「大麻を合法としてよいか」でした。ペアになった2人は制限時間内で交互に1センテンスずつ、意見を述べ合いました。
このトレーニングのポイントは3つあります。第一に対等な立場で意見交換をすること、第二に意見への反対と発言者への批判を混同しないこと、第三に意見交換が終わったらお互いに感謝し合うこと。
ここまで読んで「感謝なんて形だけでしょ?」と思った方もいらっしゃるでしょうね。少なくとも私はそう思っていました。でも、やってみると本当に、ありがたい気持ちが湧いてくるんですよ。まず、自分の意見を相手が真剣に聴いてくれたことに。そして、相手の意見のおかげで自分の意見をいろんな角度から見つめ直し、深められたことに。
反対されたのに心底感謝したくなるなんて、生まれて初めて!
感謝の気持ちのほかに、もう一つ、意外な感情が湧いてきました。強烈に「もっと知りたい」と思ったのです。取り扱ったテーマの周辺や、相手の意見の根拠について、もっと深く知りたい!調べたい!
私が以前働いていた愛知県田原市図書館の「議員と語ろうホリデイ」という催しでは、市民と市会議員がさまざまなテーマについて語り合うワークショップが開かれています。まさにデンマーク的な意味でのデモクラシーの場です。
いきなり議員さんと対話するのはハードルが高いけど、フィットネスだったらできそうな気がしませんか?図書館先進国デンマークと縁の深い公認講師のお二人は、大の図書館好きだそうですから、図書館の企画とあればご協力いただけるかも。テーマについての資料も用意して、知りたい気持ちにもガッツリ応えましょう。ぜひ、お試しあれ!
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