先日、立て続けに二つの読書会に参加しました。どちらもビデオ会議システム(ZOOM)を使ったオンラインの読書会ですが、その進め方にも共通点があり、実に興味深いものでした。
参加者は自分がまだ読んでいない本を用意することになっていました。いわゆる積読(つんどく)の本ですね。10人前後の参加者全員が自己紹介を終えると、一斉に手元の本の黙読を開始。30分程、スピーカーは無音でした。もちろん読んでいたものは全員バラバラ。黙読が終了すると、各自が本の内容の紹介や感想を発表しました。続いての会話では、発表された本同士のつながりが、どんどん露わになっていきました。それは、参加者同士が本を介してつながる時間でもあったのです。
「おや、あなたはその本のそんなところに興味があるんですね。私は同じ本のこんなところが面白くて…」
「そういえば、今日の発表には登場しなかったけど、こんな本もあって比較するとまた面白いんですよ…」
「どちらの本も読んでみたい!どうすれば入手できるんでしょう?」
こんな具合に知的関心で結ばれる人と人の関係性を、劇作家の平田オリザ氏は「関心共同体」と呼びました。その著書『新しい広場』(岩波書店)で、彼はこう語っています。
<ベタベタとした地縁・血縁型の社会は、若者たちには息苦しい。しかし一方、企業は個人を守ってくれない。そこで、先にも記したように、その中間に、もう少し出入り自由な、緩やかな共同体を構築し、それをネットワークで結んでいくことはできないものか。>p61
関心共同体が日々成長していく環境をつくること。それは公共図書館のさまざまな可能性の中でも、特に注目したいものの一つです。公共図書館にとって、コロナ禍は電子書籍貸出システムを導入する後押しとなっていますが、実はインターネットによって新しいコミュニティをつくるチャンスでもあるのです。日本の公共図書館では、インターネットでコミュニティをつくる動きはまだ微弱です。しかし、もしも電子書籍、デジタル・アーカイブといった取り組みに加えて、オンライン・コミュニティまで視野に入れたデジタル化が進むなら、これまで以上に公共図書館は社会にとってかけがえのない存在になるでしょう。
冒頭で紹介したオンライン読書会のうちの一つは、宮崎県の椎葉村図書館が主催していました。これはすばらしいことです。でも、図書館が主催しなくても、住民主催の読書会と連携することだって大きな意義があります。たとえばPRへの協力。あるいは読書会に使用する本の提供。さらに、ビデオ会議のアカウントを貸し出してはどうでしょう。施設の会議室を貸し出す代わりですが、意外と利用されそうな気がします。私も近々オンライン読書会を立ち上げるつもりです。図書館のデジタル化についてお悩みのあなた。私と連携してみませんか?いつでも相談に乗りますよ。ぜひ、お試しあれ。
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