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タイトル 本の風

第27回 「じぶんでおぼえるのがかんじん」 

 新しい環境は苦手だったはずなのに、最近はとびこんでみることにしている。仕事であれ学びの場であれ、そこにはその場所のルールがある。覚えるまではひと苦労。下手すればストレスで具合が悪くなることもあるから、頑張りすぎず、心も体も元気でいられるように気を付けながら慣れていかなければならない。

 『くんちゃんのはじめてのがっこう』(ドロシー・マリノ/さく まさきるりこ/訳 ペンギン社)は、こぐまのくんちゃんが1年生になって学校に通うところから始まる。はじめて学校に行く日のくんちゃんはとても早起きだ。私も一緒である。慣れないうちはどうしても早く目が覚めてしまう。くんちゃんが道すがら出会うみつばちやこうもり、ビーバーに声をかけながら「ぼくがっこうへいくんだよ」というのもよくわかる。私も自転車での通勤途中に、川にいるカモやサギに「これからいってきまーす」と声をかけているからだ。

 新しい場所での心構えとしてお手本になるのが『ねこのごんごん』(大道あや/著 福音館書店)だ。家も名前もなかったごんごんは、迷い込んだ先の家で大きな年寄り猫のちょんに出会い、名前をつけてもらいトイレのマナーから木登りの仕方、飼い主のおばさんに怒られないためのルールを覚えると、猫としての仕事も学んでいく。ちょんの口癖は「なにごともじぶんでおぼえるがかんじん。わかったか」である。ちょんの教え方は、まずごんごんに自由にやらせてみる。その間は口出ししない。ごんごんが困って助けを求めると、そばに来て指導してくれる。それからの「なにごともじぶんでおぼえるがかんじん」である。こんな師匠の下で、いつまでものびのび暮らせたら幸せだろうなと思わせるが、やがてちょんとの別れがやってくる。その後、ごんごんは失敗して時におばさんに怒られることがあっても、ちょんの言葉を思い出し、自分で考えて答えを見つけ、一人前の猫として強く生きていく。

 ごんごんがちょんと出会って人生が変わったように、わたしも色々な場所で、先輩たちに教えてもらいながら、たくさん失敗して少しずついろんなことを覚えていったのだった。高校時代に赤点ばかり取っていた私に、どういうわけか「大器晩成、期待している」と通知表に書いてくれた先生がいた。優しかったその先生には1年しか教えてもらえなかったけれど、その言葉は大事なお守りとなり、根拠のない自信になった。今でいうところの“自己肯定感”を持たせてくれた先生にお礼を言いたい。

 S先生ありがとうございました。私は元気です。本を通して子どもとかかわる仕事をしています。不思議ですが先生と呼ばれています。子どもたちには、元気で楽しく生きていってほしいと思って接しています。まだまだ新米ですが色々考えてやってみます。自分で覚えるのが肝心ですよね。先生もどうかお元気で。(真)

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