どれも本にはさむ物体のことをいいますが、馴染みのある方はどのぐらいいらっしゃるのでしょう。今回は製本時に本の上部(名称:天(てん)といいます)に取り付けられている栞紐についてとりとめのないおはなし。
この栞紐、小説の類を好んで読まれる方はよくご存じでしょうか。美しく装丁されたハードカバーの単行本にはもれなくついているあの紐。表紙のデザインに合わせて選ばれたカラーリングはうっとりするほどです。
栞紐がついている文庫本もあります。現在、新たに出版されている文庫本では新潮文庫だけに栞紐がついていることは、ちょっと有名な話。糸井重里氏が主宰するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の中で、2005年3月から8月の間7回にわたって連載されていた「新潮文庫のささやかな秘密」では「意図せず新潮文庫の「隠れたシンボル」とも言える存在になった」と紹介されていました。
もちろん、1冊の本の中で必要な頁にマークしたり、どこまで読んだのかをマークしたりする大切な役目があります。
私が勤務する図書館の棚では本から栞紐が出ていることはまずありません。頁の真ん中あたりに、下から出ないように二つに折って挿まれています。本屋さんに並ぶ新品の本のように。
図書館の本棚から抜き出され貸し出された本が返却されると、大抵の場合、栞紐はペロンと出ています。そのペロン具合を見てその本を返却した方の人となりを想像してしまうのは、図書館員あるあるではないでしょうか(私だけかしら?)
栞紐の状態はだいたい次のとおり。
① 栞紐がラスト数ページのところに挿まれている
②栞紐が外側に全部出ている
③栞紐まったく動いていない
④栞紐の端っこが玉止めのように結ばれている
⑤ 栞紐が短く切られている
多くは①の状態です。物語を最後の最後までお読みくださり、お楽しみいただけましたか?と感想をお聞きしたい気分になります。丁寧に本を重ねてお返しくださる方に多いパターン。
②のようにして本を返却される方は、大抵、お忙しそうに大慌て。本は上下も前後ろもバラバラ。栞紐が絡まるようにして袋の中から出す方が多い気がします。もう少しだけ栞紐に、本に、優しくしておくれと念をおくります。
③のような方は、マイ栞をお使いなのでしょうか。本を愛するがゆえに、栞紐で本を痛めてしまうようなことがあってはいけないと、栞紐には触れもせず、それはそれは丁寧に本を扱われる方のようにお見受けします。
④のような栞紐が見つかった場合にはすぐさま目打ちを持ってきて玉止めをほぐほぐ。読書に夢中になり、無意識に栞紐をくるくると触ってしまわれたのですね…いけませんいけません。使い込まれた栞紐が先細りフサフサになっていたので、良かれと思って玉止めをしたという方の話を聞いたことがあります。傷んでしまった栞紐は修理で新しいものに変えることもありますので、玉止めせずにカウンターで教えてくださると大変嬉しく思います。
⑤は言語道断!悲しいことです。返却された本3冊が3冊とも、3センチくらいの長さに切られていたことがありました。栞紐だってこんなところで刈られるとは思いもしなかったことでしょう。修理して新しい栞紐を結びましたが、なんとも痛々しいお姿に変わってしまいました。このようなことは二度とおこりませんようにと願います。
そうそう、棚に並ぶ本から栞紐が出ていることもあります。事典類の並ぶ棚の本からペロンと出る栞紐は、誰かが何かを調べたことが垣間見え、手のひらサイズの小さな画面に入力するだけで、容易く物事が調べられるいま、本を使って調べることを私自身が諦めてしまわないようにと思わせてくれます。栞紐を折り挿み、本棚を整理して、誰かの知りたいに備えましょう。今日もまた、図書館であなたをお待ちしています。(石)
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