「子どもの詩って、どうしてこう、いいんでしょうね」
図書館司書の友人と、深くうなずき合った。手にしていたのは、高知県子ども詩集『やまもも』第39集『むてきの三人組』・高知県児童詩研究会編・高知新聞社から2015年に刊行されたものだ。
持ち重りのするこの詩集は、1977年以来、毎年刊行されている。高知県内の子どもたち~保育園児から中学生まで~の、つぶやきや詩のアンソロジーである。
まず、一編。
あおばずく (小1女子)
せんだんの木に
あおばずくを 見つけたよ。
目が、まるかった。
下をむいて、
くびを ぴょこぴょこ
うごかしていた。
わたしと 目があって
びっくりしたよ
まるでスケッチのような詩だ。大人の日常にはないような、ゆったりと柔らかなリズムを、うっとりと味わった。
3年生になるとこんなことを思うのか、と楽しんだのは、次の一編。
先生のかれし (小3男子)
ぼくの先生は二十四才。
先生はいつも細かいことでおこる。
そんな先生にぼくは、
「早くかれしつくりや。」
と言う。
二十四才でかれしおらん人は
あんまりおらんと思う。
七夕のたんざくにも書いてあげた。
やさしくて、力持ちで、
お金持ちの人がいいと思う。
早くつくってね。
思わず笑ってしまったり、はっとしたり、しみじみとしたり、6431編から選ばれた331編の詩は、どこから読んでもぐいっと引き込まれる。
それに、大人が守るべき子どもたちから、逆にエネルギーを注がれた、笑顔で背中をどーんと叩かれた、そんな手応えがいくつも残り、なんだか元気が出てくるのだ。
同時に、今どきの子どもは、などと軽々にネガティブな括り方をしてはいけないと、反省もさせられる。
実は、この詩集は『子どもの本のもつ力』清水真砂子著・大月書店から2019年刊・の中で知った。
清水氏が高知へ講演にゆかれ、帰りの車内でこの詩集をひらいたところ『すっかり夢中になって、乗り換えを忘れそうになるほど。自宅に着くまでの5時間あまりの楽しかったことといったらありませんでした』とあったのだ。これを読まずにいられようかと、すぐに入手して以来、ひとりで、また仲間たちとくり返し楽しんでいる。声に出して読むと、さらに楽しい。
ところで最近、絵本作家の長野ヒデ子氏が、ある新聞記事の中でこう述べておられた。『子どもの絵って、ほれぼれしちゃう、素直な気持ちが伝わってくる。あんな絵が描けたらな、といつも思います』。詩も全く同じだと深くうなずいた。
最後に今年の『やまもも』第45集『しゃぼん玉の空』から一編。
変わった日常 (中2女子)
当たり前が変わった
周りを見てそう思う
みんながつけている一枚の壁
それはマスクだ
つけていないと注意される
つけていないと病気になってしまう
苦しくても
暑くても
マスクをつけていないといけない
マスク
それは
世界から当たり前というものを変えた
鋭く、現実を切り取った詩である、大丈夫、壁はきっとなくなるから、と大人は子どもたちに約束しなければ。
そして、詩を通して子どもたちからもらったエネルギーを、倍にして注いでやらねば、と思う。(む)
design pondt.com テンプレート