皆様こんにちは。夏本番、いかがお過ごしでしょうか? 夏休みを大満喫! という方も、宿題や課題に追われている方もいらっしゃるかもしれませんね。
私が子どものころは、この時期になると、家の前の田んぼにホタルがたくさん飛んでいました。夜、家族と花火をするために外に出ると、ふわふわと優しく光りながら飛んでいるホタルを見るのも楽しみの一つでした。
いつしか、夜にゆっくりと外での時間を楽しむ機会がなくなり、気づくと、ホタルも姿を消していました。今では本物のホタルを見ることはとても難しいです。自分の子ども達にホタルのあの優しい光を見せてあげられなかったことは残念でなりません。
さて、夏になると、たくさんの虫に出会います。今回は「虫」をテーマに絵本を選んでみました。
1冊目に紹介するのは、虫の絵本と言われたらこれでしょ! の1冊、『はらぺこあおむし』(※1)です。ストーリーは明快です。おなかをすかせた小さなあおむしが、いろんなものを食べて食べて食べまくって、大きくなり、やがて姿を変える、というものです。ですが、そのストーリーを彩るカラフルさが最大の魅力なのではないでしょうか。あおむしが食べるページは大きさも演出も工夫されています。
私が好きなのは、あおむしが毎日、いろんな食べ物を食べても、<おなかはぺっこぺこ。>というリズミカルな部分です。原文では<but he was still hungry.>が繰り返されますが、もりひさしさんの訳では<まだ><やっぱり><それでも><まだまだ>と繰り返されて、言葉のリズムの楽しさを読み手も聞き手も味わえること間違いなしです。
作者のエリック=カールさんは、この本のほかにも虫を題材にした絵本をたくさん生み出しています(※2)。また、この『はらぺこあおむし』も持ち運びできるような小さな判型のものや、厚紙仕立てのものもあり、今も多くの方に愛されています。
2冊目は、科学絵本の『アリからみると』((※3))です。この本は、アリの目線で語られる本文と、アリの視点から見える写真で構成されています。
小さなアリから見える風景は、とても新鮮です。私たちから見ると小さな雑草でも、アリから見るとジャングルのようです。この本に登場する虫たちは、トゲトゲした足や、ふさふさはえた毛、表面の模様や触角、目、羽など、ドアップで見ると迫力満点です。虫たちと、雄大な風景との対比が楽しい写真を撮影したのは栗林慧さんです。栗林さんはこの本のほかにも、たくさんの虫たちの写真を撮影しています。私は栗林さんのドアップ虫写真が大好きです。
ところで、人間は、アリからどういうふうに見えているんでしょうね。
3冊目は、『虫ガール ほんとうにあったおはなし』(※4)です。主人公のソフィアは、2歳半でチョウと仲良しになってからというもの、虫のとりこになってしまいます。ですが、だんだん大きくなると、周りの子から「かわっている」と言われてしまいます。虫を好きなことをやめようとした時、お母さんの出した1通のメールがソフィアを勇気づけてくれます。
ソフィアがこの本を書いたのは、11歳の時でした。何が普通で何が普通でないかという一部の評価によって、大好きなものをあきらめた人もいるかもしれません。でも、今は多様性が認められる時代になりました。好きなものは好き、と言えることは幸せなことです。また、好きなもので、世界とつながることも簡単にできるようになっています。自らを「虫ガール」と名乗り、とことん好きを極める姿に勇気づけられるのではないでしょうか。
このほかにも、いろんな虫がたくさん絵本になっています。夏休みに人気のジャンルの一つでもあります。
実は、私の勤務地、山武市のマスコットキャラクター「SUNムシくん」(※5)もイチゴとテントウムシがモチーフとなっています。実物と触れ合うのは苦手、という方も、ぜひ絵本で手に取っていただけたら嬉しいです。
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エリック=カール 作
もりひさし 訳,偕成社,1976