皆様こんにちは。4月です。このコラムも2年目を迎えました。読んでいただけている皆様に大感謝です。
4月、新しい場で新しい春を迎える、という方も多いのではないでしょうか? この冬を振り返ってみると、私の住む千葉県では、寒さを感じる日も少なく、いつの間にか美しい桜が咲き誇っておりました。菜の花と桜のコントラストがとても映えて、毎年の楽しみの一つとなっています。
さて、今月は、「記憶に残る絵本」を取り上げたいと思います。1冊目に紹介するのは、私が覚えている絵本の1冊、『おおきなかぶ』(※1)です。この本は、ロシアの昔話をトルストイが再話してできた、超ロングセラーの絵本ですし、教科書にも掲載されています。『おおきなかぶ』はこの本のほかにも、いろいろな方が手掛けて何種類もの絵本が出版されているのですが、私の中の「ザ・おおきなかぶ」は、やはりこの本になってしまいます。
小さい頃に母に読んでもらって、「うんとこしょ、どっこいしょ」の掛け声を一緒に楽しんだことは、何十年もたっても記憶に残っています。次々にいろんな動物たちが登場するのも楽しいです。個人的には、おばあさん、まごの衣装がきれいだなぁ、と思っていました。
大人になって、勉強のため、また自分の子どものために手にした時にも、改めてリズムの気持ちいい語感と、なんといっても、迫力あるかぶの大きさの描き方に改めて驚かされました。シンプルなストーリーで、長く愛されているのもうなずけます。
次は、15年ほど前に、実際に図書館であったエピソードです。幼稚園生くらいの女の子とお母さまが図書館に来館されました。しばらく絵本のコーナーにいらっしゃったのですが、女の子がおずおずと図書館カウンターに来ました。
「前に読んだ本が見つからないけど、もう一回読みたい!」
とのこと。図書館探偵の出番です!
ご本人とお母さまから、お話をよく聞いてみると、確かに、この図書館にあった絵本だということ、男の子と女の子が登場すること、クジラの背中に乗るストーリーだったということしかわかりませんでした。
いろいろとツールを使って調べたのですが、どうしてもピンとくる絵本ではありません。見つけたらご連絡する約束をし、そこから絵本探しが始まりました。タイトルも、著者にまつわる情報も何もなく、ストーリーもはっきり覚えていないということなので、頼りになるのは、クジラしかありません。そこで、クジラがタイトルになっているもの、登場するものなど、いろいろと確認したのですが、見つかりません。ですが、この図書館に絶対あるはずなのです。
この図書館にある絵本は約10,000冊。腹をくくって、1冊ずつ手に取る作戦に変更しました。気持ちははやるものの、なかなかお目当ての本は見つかりません。もしも貸出中だったら、もしも延滞資料になってしまっていたら、など、よくない想像も頭をよぎります。
しかし、その日はやってきました。手に取った絵本は、表紙にクジラと男の子、女の子(ほかにもユニコーンやイルカ、ウシなども)が描かれています。なぜか私の心臓がドキドキしながら、ページを繰っていくと、クジラの背に乗る男の子と女の子の絵がありました。やったー! とガッツポーズ。
ですが、この絵本が、女の子が探していたものだとは限りません。急いでご連絡し、また女の子とお母さまが来館されました。見つけた絵本を手渡すと、にこにこの笑顔で「ありがとう! この本だ!」と言ってくれました。お母さまも「子どものわがままをきいてくださって、ありがとうございます」と言ってくださいました。でも何よりも、女の子の満面の笑顔と、すぐに本を開き、じっくりと見つめるまなざしが、私たちにとっての最高のご褒美です。
その本は何だったか、ですって? それは、『ほしになったふね』(※2)でした。私にとってこの本は、その女の子との思い出の1冊にもなりました。これからも「誰かの思い出の本を探すお手伝い」を、つないでいきたいと思います。
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A・トルストイ 再話,
内田莉莎子 訳,佐藤忠良 画,
福音館書店,1966