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タイトル Hidden Library,Invisible Librarian

10. おしょうがつさん

挿絵1
『おしょうがつさん』
谷川俊太郎 文,大橋歩 絵
福音館書店,1983(現在品切れ)

 皆様あけましておめでとうございます。今年も楽しみながら、コラムを書かせていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 皆さんはどんなお正月を過ごされましたか?ようやくコロナ禍前のように人の流れが増えてきたように感じます。初詣、初売り、と多くの人でにぎわう場所にお出かけする方も、家でのんびりテレビを見ていた方もいらっしゃるかもしれません。
 子どもの頃の私にとっては、「お正月」は「少し面倒くさい行事」でした。年末の大掃除も片付けも、大の苦手。親戚の集まる餅つきや、料理のお手伝い、新年のご挨拶に行ったり来たりと、家族以外の付き合いも少し苦手。楽しみなのはおいしいものを食べられることとお年玉、という現金な私だったのでした。
 そんな私も、大人になってみると、「お正月」がなんとも気持ちのいいものになりました。節目を超える感覚は、なんとなくきりっとしていて、身が引き締まりつつも、家族だんらんで、ゆったりとした時間を味わえます。相変わらず苦手なものは苦手ですが、それも楽しめるようになってきたのがうれしい今日この頃です。
 なかでも、初日の出を見に行くようになったことは、大きな変化です。海の近くに住んでいながら、今までわざわざ海に行く、ということはありませんでした。子どもが剣道を習い始め、初稽古で日の出を迎えるようになり、大自然の中で新しい年を家族、友人と迎える、という機会は、親子ともども成長させてもらえたと感じています。
 今回は新年を迎えた今、読んでほしい絵本をご紹介します。

 一冊目は、『おしょうがつさん』(※1)です。タイトル通り、お正月をテーマにした絵本です。大橋歩さんのカラフルでメリハリのきいた絵がとてもポップで、見ているだけで楽しい気持ちになります。表紙のいろはかるたも、絵を見つつ、ことわざを思い出しつつ、じっくり見入ってしまいます。また、テンポのいい詩は、このコラムでも何度もご紹介している、谷川俊太郎さんによるもので、正月にちなんだ事柄を説明する詩です。私のお気に入りは、「こま」「みかん」「こよみ」です。残念ながらこの本は現在品切れ中とのことでした。お近くの図書館で探して手に取ってみていただけたらうれしいです。

 二冊目は、『よあけ』(※2)です。おじいさんと孫が湖畔で迎える夜明けが描かれている、アメリカの絵本です。新しい一日の始まりが、シュルヴィッツさんのシンプルな文章と絵によって、静謐さや神聖さを感じさせてくれるものとなっています。夜から朝へ少しずつ時間が進むにつれて、ダークなカラーから少しずつ光を感じるカラーになり、色の移り変わりも印象的な一冊です。穏やかな朝を迎えるこの絵本が長く愛されているのも理解できます。

 三冊目は、『あさになったので まどをあけますよ』(※3)です。絵本作家の荒井良二さんのカラフルな色調が美しく楽しく、いろいろな場所のいろいろな朝が垣間見えます。窓を開けるのは子どもたち。それぞれの場所で開けられた窓から見える風景は違うけれど、その日の始まりを気持ちよく迎える様子がうかがえます。毎日変わらず、当たり前のように訪れる朝ですが、必ずしも平和で穏やかな朝とは限りません。世界で戦争や紛争が起きている今、それは実はかけがえのないことなのだと、改めて思わざるを得ません。この地球に住む誰かが、朝、窓を開けて、「やっぱりここが好き」と思える世界であってほしいと思います。

 さあ、新年を無事に迎え、やる気満々、新たな気持ちでスタートです。私の目標は、毎日、平和な朝に感謝しつつ、すがすがしい気持ちで迎えられるように、まずは早起きして、窓を開けたいと思います。皆さんはどんな年にしたいですか?


  • ※1 『おしょうがつさん』
      谷川俊太郎 文,大橋歩 絵,福音館書店,1983(現在品切れ)
  • ※2 『くろうまブランキー』
      ユリー・シュルヴィッツ 作・画,瀬田貞二 訳,福音館書店,1977
  • ※3 『あさになったので まどをあけますよ』
      荒井良二 作・絵,偕成社,2011

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