皆様こんにちは。8月に入り、海に山にと、夏を満喫していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。もしかしたら、海外で過ごしている、なんて方もいたりして⁈ かくいう私は、近頃はやりのキャンプに挑戦してみたいとは思いつつ、暑さにめっぽう弱くて、もっぱらインドア生活を送っています。
私の勤務する図書館でも夏休みのイベントを計画し、親子連れのお客様もたくさん来館してくださっています。また、読書感想文や自由研究などの本を探しにくる方も増えてきます。時間のかかる宿題ほど、「あとでやろう」と後回しにしてしまって、気づいたらお盆を過ぎ、悲鳴を上げるなんてことも夏の風物詩? かもしれません。
8月というと、忘れてはならない、忘れることのできない「戦争」そして「平和」を考える機会が多くなります。日本でも大きな悲しみを味わった過去がありますが、今まさにロシアとウクライナの戦禍は収まらず、私たちにとっても不安な気持ちをぬぐうことができません。このテーマの本は多く出版されているのですが、その中から2冊紹介したいと思います。
一冊目は、『せんそうしない』(※1)です。江頭路子さんによる表紙の絵は、やさしいタッチながらも、まっすぐにこちらを見つめる男の子と女の子が描かれていて、とても印象的です。絵を追っていくと、子どもたちの夏の一日が描かれている場面が続いていきます。ですが、谷川俊太郎さんの言葉は短いながらに、強く響きます。「せんそうしない」ものはたくさんあるのに、「せんそうする」ものは限られている、そしてそれが大切なものを奪ってしまうことを、読む人の心に語りかけてくるような絵本です。ニュースで戦争の悲しい場面を見るたびに、この絵本の言葉と、表紙の男の子と女の子のまなざしを思い出さずにはいられません。
二冊目は、『せかいでいちばんつよい国』(※2)です。この本を初めて手にとったときは、衝撃でした。かわいい表紙の絵からは想像できないような力による戦争が行われ、ページを繰るごとに気持ちが重くなりました。征服する側は「世界中を幸せにするため」という理由で征服していくのです。そして最後に残ったのは「小さな国」一つ。その小さな国で起きるできごとが、重かった気持ちを笑顔に変えてくれました。本当の強さって何だろう、そんなことを真剣に考えさせられます。
終戦直前の昭和20年8月13日、私の勤務する山武市の成東(なるとう)駅でも戦争による悲しいできごとがありました。駅に停車中の貨物列車に向けて、アメリカ軍の機銃掃射が行われたのです。くしくもこの貨物列車には高射砲や弾薬、軍事物資などが積みこまれていました。列車が煙をあげ始めると、駅長はじめ、職員、要請によって駆け付けた将兵たちが必死に消火活動にあたりますが、一向に消えません。そこで、引火した車両を切り離し、駅や住民たちを守るため、なるべく遠くへ運ぼうとしましたが、無念にも爆発し、多くの命が奪われたのです。なかには14歳の少年や女性職員も含まれていました。
引火から爆発まで約18分間。終戦まであと2日という悲劇は今も語り継がれています。そして、成東駅前には「礎」という慰霊碑が建てられ、毎年8月13日に献花式が行われています。このできごとについては、地元の郷土研究クラブによる本(※3)が郷土資料として保存されています。
誰もが戦禍におびえることなく、暮らせる世界は当たり前ではありません。戦争を知らない子どもたちにも伝わる言葉で、手渡していくことも私たち大人の役割かなと思っています。そして、今、平和な暮らしをすることができている毎日に感謝したいと改めて感じています。絵本を通して、平和であること、日々の暮らしのことを考え、対話するきっかけになれば幸いです。
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文:谷川俊太郎,
絵:江頭路子
講談社, 2015