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タイトル Hidden Library,Invisible Librarian

04. くまさんアイス

挿絵1
『くまさんアイス』
とりごえまり作,  
アリス館, 2003

 皆様お元気ですか? いよいよ7月、夏本番に向かいますね。子どもたちは夏休み目前。何して遊ぼうか、どこへ行こうかと計画する人も、部活や塾で夢に向かってがんばる人も、今からワクワクドキドキしているかもしれませんね。 
 一方、一番大きなため息をつくことになるのが世のお母さんたちなのではないでしょうか。学校が長期お休みとなり、毎日子どもたちが家にいます。そうすると、お昼の準備や宿題の進行状況の確認など、普段はしなくてもいい任務!? が増えます。暑さと、思い通りにならないのとで、「ウキー!」となってしまう・・・。リアリティがあるって? そうそう、これは、かくいう私の体験談なのでした。 
 そんな私でしたが、日中いくら「ウキー!」と頭に血が上っても、子どもたちが寝る前に必ず絵本を読んでいました。夏の暑い一日にいいかなと思って選んだ絵本が『くまさんアイス』(※1)です。 

 こぶたのプリンくんは、お友だちが家にくるので、おやつを買いに出かけます。今日のおやつは、くまさんの顔の形をした「くまさんアイス」に決定! 10個買って帰り道を歩き始めると、いろんな人に呼び止められます。
 読んでいる大人はここでいやーな予感がすると思いますが、案の定、プリンくんが家に着いたときにはアイスがすっかり溶けてしまっています。そこへプリンくんのお母さんの登場です。
 わが身に置き換えて考えたら「早く帰ってこないからよ」「代わりのおやつはないよ」なんて言っちゃいそうな、心のせま~い自分に反して、この絵本に登場するプリンくんのお母さんは、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と優しく声をかけ、ナイスアイディアでこのピンチを切り抜けるのです。プリンくんがお母さんを大好きなこと、まちがいありませんね。優しいお母さんが登場するこの絵本、わが子が大好きなのも納得なのでした。そして、なぜかこの本を楽しんでいると、親子そろってアイスを食べたくなってしまう、不思議な魔力のある1冊です。

 アイスに肩を並べて暑い日に食べたくなるのが、かき氷。この本の表紙を見ると、すーっと汗が引くような気がする、『かき氷 天然氷をつくる』(※2)です。
 
 その昔冷蔵庫がない時代には、氷は貴重品でした。埼玉県の長瀞で、昔ながらの製法により、かき氷の元となる氷を大切に作っている、阿左美さんを取材しています。冷蔵庫で簡単に氷を作ることはできますが、阿左美さんの作る氷は天候によって左右され、手間がかかります。写真でつづられる作業の一つ一つが、固く、透明な氷の秘密です。口に入れたら一瞬にして溶ける氷に感謝したくなる1冊です。
 
 自分が子どもだったころは、家が自営業だったので、家族がいつも家にいました。小学生のころは友人が少なかったこともあり、ラジオ体操が終わったら、外出することはほとんどなく、たいていは家で本を読むか、ドリル(「夏休みの友」、ご存知の方もいらっしゃるでしょうか)をやるか、という、なんとも模範生のような夏休み。午後は風の抜ける部屋で風鈴の音を聞きながらごろごろして、気づいたらお昼寝、というのが至福の時でした。
 涼しくて大好きな本がある図書館は、仕事の合間に母が連れて行ってくれました。当時はブラウン式(カード式貸出法)で貸出してもらえる冊数は一人3冊。当時大好きだった偉人の伝記や、江戸川乱歩のシリーズを端っこから順番に読破するのが楽しみでした。歩いて行ける場所に図書館があったら毎日通っていただろうなぁと思いつつも、欲しい本は惜しみなく買ってくれていた両親に感謝でいっぱいです。大好きな本は、自分の宝物になると思っています。
 大人も子どもも、ご自身の大好きな本に出会える場所として、図書館をたくさん活用して、宝物を発見していただけたら幸いです。


  • ※1 『くまさんアイス』
    とりごえまり 作, アリス館, 2003
  • ※2 『かき氷 天然氷をつくる』(ちしきのぽけっと20)
    細島雅代 写真, 伊地知英信 文, 岩崎書店, 2015

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