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タイトル Hidden Library,Invisible Librarian

03. ピッツァぼうや

挿絵1
『ピッツァぼうや』
ウィリアム・スタイグ作, 
木坂涼訳, らんか社, 2000

 みなさん、こんにちは。6月に入り、しとしと雨の降る日も増えてきます。雨ってちょっと憂鬱ですよね。荷物が多くなるし、濡れるし、湿気で髪型も崩れちゃう(くせっ毛の私にとっては、本当に雨は天敵!)。そんなちょっとブルーな気持ちになってしまう「雨」が、待ち遠しくなっちゃうかもしれない絵本『ピッツァぼうや』(※1)を紹介します。

 この絵本の主人公、ピートは、友だちと外で遊ぼうと思っていたのに、雨が降ってきて、ご機嫌ななめ。そんなピートを見たおとうさんはいいことを思いつきます。そう、ピートでピッツァをつくっちゃうんです。なにかおもしろいことが起こりそうと感じたのか、ピートはおとうさんに抱っこされた時にはもう笑顔。家にあるものを食材に見立てて、生地をこねて焼き上げるまで、ピッツァづくりの工程もたどりながら、おいしそうなピートピッツァができあがります。シンプルなのに、表情豊かな絵とともに、言葉のリズム感も軽やかで、雨の日に最初に頭に浮かぶ1冊です。家の中で、楽しく親子で過ごす時間は、とってもほほえましく、大切にしたい時間でもあります。親子のスキンシップに、この絵本を片手に、ぜひピッツァづくりを取り入れてみてはいかがでしょうか?

 わくわくする雨の日の絵本をもう1冊。『はっぱのおうち』(※2)です。こちらは前回紹介した『とん ことり』(※3)を描いた林明子さんが絵を描いています。さちは、突然の雨で雨宿りしていると、虫たちも雨宿りにやってきます。場所は動かないのに、どんどん登場する虫たちとの掛け合いにも引き込まれて、楽しい気持ちがわきあがってきます。

 また、雨の日の大人を描いた絵本を1冊。『おじさんのかさ』(※4)です。立派で大事な傘だから、雨が降ったら絶対使わない、なんて思っていたおじさん。でも子どもたちの歌に引き込まれて、大雨にもかかわらず、ついに傘を開いてしまいます。リズミカルな歌が頭から離れなくなっちゃうかもしれませんよ。どの本も、「雨の楽しさ」を感じさせてくれること、間違いなしです。

 図書館で働いている私にとっても、雨の日は心配ごとが多くなります。本が湿気を含んで、よれて、波打ってしまうこともしばしば。新聞紙に水分を吸わせたり、アイロンを使ったりして、なるべく元の状態になるように、スタッフは悪戦苦闘しています。

 特に返却用のブックポストを開けるときはドキドキです。普段はむきだしで本を返却できるようになっているので、「返却された本は大丈夫かな、濡れていないといいな」なんて思いながらポストオープン。すると、図書館の本が入ったビニールの袋が。雨の日を思い、本が濡れないように、袋の口をきちんとしばって返却してくれていました。

 また、「今日、返却日だったから」と、大雨のなか図書館カウンターにご来館いただいた利用者さん。ご自身の肩口はびっしょりと濡れていましたが、本が濡れないように、しっかりと袋に入れて上着で抱えるようにして持ってきてくれました。返却に来てくださった方々の本への愛情を感じて、ブルーだった気持ちがスッキリはればれとした瞬間でした。

 少し憂鬱な気持ちになる雨ですが、見方しだいで出会いや楽しみが発見できるのがうれしいですね。ちなみに、このエッセイのタイトルも「雨のち晴れ」。落ち込むこともあるかもしれないけれど、やまない雨はありません。そして、雨の中にも小さなハッピーが隠れているかもしれないな、と思って、このタイトルを選びました。皆さんも、雨の日のハッピー見つけてみませんか?


  • ※1 『ピッツァぼうや』
      ウィリアム・スタイグ作, 木坂涼訳, らんか社, 2000
  • ※2 『はっぱのおうち』
      征矢清 作, 林 明子 絵. 福音館書店, 1985
  • ※3 『とん ことり』
      筒井 頼子 作, 林 明子 絵. 福音館書店, 1986
  • ※4 『おじさんのかさ』
      佐野洋子 作・絵,講談社,1992

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