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連載エッセイ ROCK司書のセンチメンタル・ライブラリー 若園義彦

第12回 <桟橋へ>

 目的地が決まった方には図書館へ寄ることをおすすめしたい(目的地が決まっていない方も、ちょっとだけがまんして最後までお付き合いいただきたい)。
 キエフにご旅行に?それはそれは。では歴史や文化についての本を読んでおくと一層楽しめるでしょうねえ。素晴らしい作家もいますし。もちろん旅行ガイドもありますよ。
 アスパラガスをたくさんもらったから料理に使いたい、ですって? 白? 緑? 両方! 素晴らしい。こちらに野菜を使った料理の本があります。
 電験三種の取得ですか。目的地はかなり具体的ですね。ではこちらを。

 いろいろな目的地があって、そこに至るためのいろいろな手段がある。その手段を並べている図書館は、さながら交通機関のターミナルのようではないか。
 ターミナルにもいろいろある。世界中の大都市を最短時間で結ぶ、世界的な建築家によって設計された壮麗な国際空港。各種国際路線、遠距離路線が発着する歴史ある鉄道駅。地下鉄や長距離バス、たくさんの鉄道が行き交う、複雑で巨大な複合ターミナル。路線バスが日に数本通り過ぎる、鄙びたバスターミナルもある。
 公共図書館は、そのいろいろなターミナルの組み合わせみたいなものか、と思う。旅行者が目的地に到達できるよう、交通機関を案内する。わかりやすい目的地なら電車1本、バスで数分なんてこともあるし、場合によっては徒歩が便利だったりして。しかし得てして目的地は複雑で、まずは電車で空港へ、飛行機を2回乗り換えて長距離列車。地下鉄に乗ってバスで20分、さらに徒歩15分、なんてこともある。無事に辿りつけるといいのだが。
 実際に行くのは旅行者だから、図書館では移動手段の提供、案内をするだけ。それでも旅行者の意向を考えて、様々なバリエーションを用意する。時間優先?距離、価格、わかりやすさ、便利さ、楽しさ。優先事項も様々。それぞれ想定して準備しておきたい。

 さて当館、センチメンタル・ライブラリーは小規模で、ちょっと特殊な図書館。イメージするところは「離島航路のターミナル」。数本の桟橋に、小さな旅客船。島と島をつなぐ航路。船を待つ間に、地元産のフルーツを食べるのも、ビールを飲むのもいい。
 書架を本が出たり入ったりするように、船も桟橋を出たり入ったり。あなたの目的地に向かう船、本があるといいのだが。見当たらないようだったら、一緒に探しましょう。
 目的地が決まっていない方、お待たせしました。ここで行き交う船、本を見ていたら、行きたい場所、やりたいことが見つかるかもしれませんよ。のんびり海でも見て、くつろいでいってください。
ではちょっと、桟橋を見てきます。

挿絵
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