back number

連載エッセイ ROCK司書のセンチメンタル・ライブラリー 若園義彦

第7回 <おとな食堂>

 前回の「おいしく食べる」は「自分の好きなものだけじゃなく、なんでもおいしく食べたいね」という趣旨。この左上の方の「06」ってあたりをクリックしていただくとお読みいただけるので、よろしかったらどうぞ。
しかし。とは言え。やっぱり。「おいしいものが食べたい!」のである。「健康」とか「栄養バランス」なんて「排泄物召し上がれ!」なのである。ね、そういうときもあるんですよ。そうなったら「大好きなおいしいものを思う存分食べるしかない!」わけですよ。
 さて、では何を食べましょうかね。ベルーガのキャビア?キンキンに冷やしたウォッカといっしょに?それとも七面鳥にトリュフをぎゅうぎゅう詰めて焼いてみるか。もしくはフォアグラをカリカリにソテーしてリンゴのソースを絡める、とか(我ながら例えが貧しいね…)。
 いやいや、ちょっと待て。「健康」や「栄養バランス」はさておき、財布が許すか、という問題である。例外はもちろんたくさんあるけれど「おいしいもの」は高価である場合が多い。

 近年「子ども食堂」が話題になることが多くなった。数が多く形態が様々なのでひとまとめにはできないが「無料または安価で子ども(を中心にした人たち)に食事と居場所を提供するところ」といったところだろうか。ボランティアや寄付によって運営されているところが多いようだ。
 この活動の背景(のひとつ)には「貧困」という問題がある。「貧困」という言葉は使い方が難しい。場合によっては「貧困」状態にある人を苦しめたり、その行動を縛ったりすることにもなる。また「そんなの貧困じゃねえ」と激しい反論を呼び起こすこともある。それだけデリケートな言葉だからだろう。そのデリケートな問題を見過ごせないと感じた人々が取った行動が「食事を提供する」だったことには大きい意味がある、と思う。「誰もが食べることに困らない社会がいい社会だ」と考えている人々がこの活動に携わっているのだろう。

挿絵

 さて「おいしいもの」に戻ると、キャビアの興奮(に値するもの)やトリュフの感動(に相当するもの)やフォアグラの衝撃(に劣らないもの)を無料で、誰にでも提供している機関がある。もう言うまでもないけれど図書館である。
 図書館には世界最高の情報や知識、知恵が蓄積されていて、すべての人に提供される。「誰もが情報にアクセスできる社会がいい社会だ」と考える人々が運営に携わっているのか。そういう意味では図書館と「子ども食堂」は似ているかもしれない。
 しかし。子どもにはキャビアは早すぎる(偏見)。なのでここは「おとな食堂」としておこう。もちろん「おとなの味」を探りにくる子どもたちは大歓迎である。

Copyright (C) yukensha All Rights Reserved.

design テンプレート